2020 Fiscal Year Research-status Report
保育における「おもしろさ」の生成過程に関する現象学的研究:園文化の視点から
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17K01897
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
東村 知子 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (30432587)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 保育 / おもしろさ / 価値 / 個と集団 / 園文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「保育における『おもしろさ』は実践の中でいかに生み出されるか」を「園文化」という視点から明らかにしようとするものである。2020年度は、新型コロナウイルス感染症対策で多忙化する保育現場の状況をふまえ、計画していた追加インタビューは実施せず、本研究の理論的な柱の一つとなる、K. J. ガーゲンの関係主義的人間観について検討を行った。翻訳書『関係からはじまる』の出版後に教育関係者のグループが始めた研究会等に参加し、そこでの議論を通して、教育を考える上での関係の視点について理解を深めた。 新型コロナウイルスの流行が落ち着きを見せた年度の後半は、協力を得られた園において追加の保育観察と保育者へのインタビューを実施することができた。そこで得られたデータを上記の関係論に基づいて検討することにより、個と集団をつなぐ保育者の専門性の一つのあり方として、価値調整という側面があることが見えてきた。例えば、遊びの中で生じる子ども同士のトラブルは、一人一人にとっての価値がせめぎ合う場であり、外から客観的な物差しを当てはめて裁定することが困難な場合が多い。保育者も日々の保育の中で、ある子どもや遊びにじっくり関わろうとすると他の子どもたちに十分に関われないなど、相反する価値によるジレンマを抱えながら、その時々で最善と考える選択肢を瞬時に選びとっている。こうした対立する価値の中で、保育者は、子どもとともにそれらを調整し、新たな価値を創出している。そのことによって、一人ひとりを大切にしながら集団を作る実践が可能になり、それが保育のおもしろさにもつながっていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
上述の通り、計画していた追加インタビューが実施できなかったこと、また、データ収集は行ったものの、データの整理に予想以上に多くの時間を要し、分析と成果公表が十分にできなかったため、再度、研究期間延長を申請した。そのため、遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、今年度の成果として見えてきた視点から、これまで収集した保育観察とインタビューのデータを分析し直し、考察とまとめを行っていく。子どもたちの関係がどのように作られ、変化したか、保育者はそのプロセスにどのように関わってきたかを中心に、保育者が子どもや保育についてどのように捉え、語る(語り合う)のか、という観点も含めて検討する。また、それぞれの園での分析結果を統合して園文化を描き出すとともに、異なる園のデータの比較から、園文化や遊びと保育のおもしろさの園による違いおよび共通点についても考察する。
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Causes of Carryover |
データの整理・分析に時間を要し、予定していた研究発表ができなかったため、次年度使用額が生じた。次年度の研究成果公表に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)