2017 Fiscal Year Research-status Report
保育所(園)におけるアナフィラキシー初期対応研修プログラムの開発と評価
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17K01908
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
阿久澤 智恵子 埼玉医科大学, 保健医療学部, 講師 (70596428)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青柳 千春 高崎健康福祉大学, 保健医療学部, 准教授 (10710379)
金泉 志保美 群馬大学, 大学院保健学研究科, 准教授 (60398526)
佐光 恵子 群馬大学, 大学院保健学研究科, 教授 (80331338)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 食物アレルギー / アナフィラキシーショック / アドレナリン自己注射薬 / 保育所(園) / プログラム評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26~28年度に行った研究課題「アドレナリン自己注射薬を持参している保育所の子どもへの対応の現状と課題」の調査結果をベースに、保育所職員が感じているアナフィラキシーショックの対応に対する知識不足や不安感・自信のなさを軽減し、アナフィラキシー対応の救急処置体制を整備することを目的としたアナフィラキシー初期対応研修プログラムを作成・実施し、その効果を検証した。食物アレルギーの基礎知識(講義)・アドレナリン自己注射薬の実技訓練(実技)・アナフィラキシー初期対応のシミュレーション訓練(実演)の構成で、約180分の研修プログラムとした。7施設計155名の保育所職員が研修を受講した。Kirkpatrickの4段階評価測定モデルを用いて研修前・研修後・研修6か月後にアンケート調査を実施し、145名から回答を得た。 保育所職員のアナフィラキシー対応に関するネガティブな意識は、研修前と比較して研修後、研修6か月後に有意に軽減されていた。「一般向けエピペンの適応」の13の症状について研修前後・6か月後に、「息がしにくい」以外の全ての症状において有意な差が認められた。シミュレーション訓練後、保育所の救急処置体制の改善点が具体的に抽出され、研修6か月後は具体的な改善が行われていた。シミュレーション訓練を各施設の保育現場で行うことによって、自園の改善すべき救急処置体制を整備する課題に気づき、実施可能な部分から少しずつ救急処置体制を改善するなど、職員個々の行動変容および組織の意識改革が図られていた。しかし、シミュレーション訓練を実施し模擬的状況下での実践体験を経ても、恐怖感や不安といったネガティブな心理が大きく軽減することはなかった。 今後、アナフィラキシー初期対応研修プログラム内容を再検討していくこと、また、保育所職員が定期的・継続的に研修を受講できるようなシステムづくりが課題となる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年~平成28年度にかけて行っていた一次調査をもとに作成したアナフィラキシー初期対応研修プログラムの試案と評価項目・評価ツールがほぼ出来上がっていた。前年度(平成28年)に倫理審査の承認を受けていたため、スムーズに調査を開始することができた。また、A県保育協議会の研究への賛同・協力が得られ、A県の保育所(園)・こども園への研修プログラム実施について全施設管理者への連絡をしていただいた。研修受講および研究協力を申し出た保育施設が7施設(約160人前後)あり、多重比較に必要なデータ数を取ることが可能となった。また、共同研究者の協力により統計解析も予定通り進み、結果を得ることができた。 研究成果の一部は、国際学会にて発表した。論文については、英文での投稿に向けて準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度実施した研修プログラムについては、改善・工夫の余地がある段階である。特に、アドレナリン自己注射薬を適応するタイミングである13の症状およびアナフィラキシーショック発現の場面設定をしたシミュレーション訓練を視覚的に捉えてもらうためにDVDの作成を検討している。また、保育所(園)・子ども園においては、アナフィラキシー対応のキーパーソンが不在の施設が多く、アナフィラキシー対応の研修資料作りやマニュアル作りを配置の少ない保育所看護職者が手探り状態で行っている現状がある。作成予定のDVDを含めた「アナフィラキシー研修プログラム」の有効性を今年度評価した結果と比較し、さらにプログラム内容の検討を重ねていく。有効性を検証したプログラムを看護職者に、保育所職員への研修を牽引・先導していくための資料やツールとして活用してもらえるよう検討したい。最終的に、保育所看護職者が保育所(園)において、アナフィラキシー対応のキーパーソンとしての役割を果たせることを目指している。また、研修を受講した保育所職員全員が、突発的な事故に対して自信をもって対応できるよう食物アレルギーに関する基礎的な知識を視覚的教材により持続的に身につけるとともに、アドレナリン自己注射薬の実践訓練・シミュレーション訓練により危機管理意識を高め実践力を身につけられることを目指している。
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Causes of Carryover |
研修プログラムに視聴覚教材としてDVDを作成すること、研修を実施するためのプロジェクターやスクリーン等の物品を準備する予定であった。平成29年度は、試案としてのプログラム実施・評価が先行し、消耗品や教材の準備が後回しになったため、それらの費用が未使用である。DVD作成については、作成スタッフ(共同研究者と研究協力者)と業者とで会議をもち、平成30年度秋頃を完成の目標とし進める予定であった。しかし、DVD作成の監修を依頼し承諾した医師側の諸事情および研究者・研究協力者の日程調整とがスムーズにいかず、現在DVD作成が停止している状況がある。平成30年度は、共同研究者と研究協力者と共に、DVDの内容や完成時期・プログラムへの組み込み方・プログラム実施方法について再検討する予定である。
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Research Products
(1 results)