2019 Fiscal Year Research-status Report
保育施設と養成校と連携した新任保育者の早期離職予防活動モデルの開発
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17K01934
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Research Institution | Shokei Junior College |
Principal Investigator |
横山 博之 尚絅大学短期大学部, その他部局等, 教授 (90413658)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
増淵 千保美 尚絅大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (00555386)
重松 由佳子 (有馬由佳子) 久留米大学, 医学部, 教授 (90320390)
竹下 徹 尚絅大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (90610006)
柴田 賢一 尚絅大学短期大学部, その他部局等, 教授 (90615212)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 新任育成 / 早期離職予防 / 保育における職場環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、「平成24~29年度卒業生就職状況および保育施設の職場環境と心理的傾向に関するアンケート」(2019年2月~3月調査)の分析から、新任保育者の早期離職要因には、職場・保育環境が大きく関係していることを明らかにした。 2017年度までの調査では、早期離職者以外の新任の声しか集約できなかったことが課題であった。しかし、今回の2019年のアンケート調査では、筆者が所属する保育者養成校の平成24~29年度卒業生のうち、保育職に就職した全員に対して行ったもの(回収率20.5%)であり、悩みながら、問題を解決できずに早期離職せざるをえなかった者が保育・職場環境に対してどのような思いを抱いていたのかを把握できた。 分析から、早期離職者(1~3年以内で離職)にとっての職場は、仕事への圧力や緊張感の度合いが高く、主体的な仕事ができないと感じられる職場だったという傾向が表れた。保育技術や職場内でのコミュニケーションの課題はあったとしても、精神的な圧力を感じ、自分の意思を表現できずに早期離職していった姿がみえてくる結果であった。逆にいえば、早期離職を予防できる職場環境は、「同僚」に支えられ、個々の保育者が裁量を持ち、自ら責任感とやりがいを持って保育ができる環境であると考えられた。 また分析の結果、保育現場で特に考えなければならない課題としては、「休息できる場や時間の確保」が挙げられる。この点は、離職が多い少ないにかかわらず、特徴的に表れている点であり、これまでの研究成果と一致するものであった。保育現場における労働環境の改善は喫緊の課題であると考えられる。 保育分野以外(看護・介護分野)での先駆的な早期離職予防への取り組みの調査や、園内研修を通した研修のあり方、保育者の相談支援活動などの調査研究も続けており、そこで得た成果を、最終的な報告としてまとめる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの2度のアンケート調査(2018年1~2月に行った「保育施設の職場環境と心理的傾向に関するアンケート調査」と、2019年2~3月に行った「平成24~29年度卒業生就職状況および保育施設の職場環境と心理的傾向に関するアンケート」)と分析により、新任保育者の早期離職要因と職場・保育環境が大きく関係していることを明らかにした。 一方、早期離職要因は複合的であり、計画当初に考えていた、汎用的な早期離職予防モデル作成の難しさも実感している。様々な要因や状況、環境に合わせた早期離職予防モデルが必要であることもわかってきたため、一つのモデルの作成というのではなく、成功事例をもとにしたいくつかの予防モデルの提示をすることを考えている。当初の計画を修正して進めている点と、新型コロナウィルスの感染拡大の状況により、保育・介護・福祉の各現場へのインタビュー調査などがなかなかできない状況が続き、やや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査の中で、早期離職予防や新任育成、あるいは保育の職場環境改善に向けた取り組みを始めている園も存在していることがわかってきている。そのため4年目の最終年度は、まず熊本県内の保育施設へのアンケート調査を行い、新任育成や園内研修を通して同僚性を高める取り組みをしている園や、休息が取れる場や時間を確保し職場環境の改善に取り組んでいる園などを把握していくことを計画している。その中から興味深い取り組みを行っている園への質的調査を行っていく予定であり、その結果も最終的な早期離職予防モデルに取り入れたいと考えている。 これまでの成果と早期離職予防に成功している保育・介護・福祉・看護の各現場を質的に調査した結果をもとに、それぞれの異なる状況に応じた成功事例を提示する形で早期離職予防モデルとしてまとめていく計画である。 最終的に、モデル開発の研究成果は、日本保育者養成教育学会など国内の保育関連学会において発表する。
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Causes of Carryover |
当初の計画と比較して、使用額に差が生じた理由は、以下のとおりである。当初は各学会への参加や発表、および熊本県内外へのインタビュー調査を行うことを想定して、旅費やテープ起こし委託費用を多めに予算化していた。しかし、新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、各学会の中止に伴う旅費交通費の使用もなかったことや、年度末に実施予定だったインタビュー調査や各園の園内研修に参加できなかったためである。なおこれまでに行えなかったインタビュー調査などは、新型コロナウィルス感染拡大が落ち着いてきたなら、部分的に実施していきたいと考えており、その際の費用としたい。
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