2018 Fiscal Year Research-status Report
The physiological functions of protein arginine methylation.
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17K01942
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
加香 孝一郎 筑波大学, 生命環境系, 講師 (60311594)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | タンパク質アルギニンメチル基転移酵素 / ノックダウン / 脱メチル化酵素 / 線虫 / PRMT |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の本研究において、線虫個体内で大きくタンパク質アルギニン残基のMMA化に寄与しているprmt-1の欠損変異体を宿主に、prmt-1、-3、-4、-5、-6、-7のノックダウンを行ったところ、コントロールノックダウンに比べprmt-7のノックダウンで10~15%前後の低下が観測された以外は、アルギニンメチル化の量には有意な変化は認められなかった。 ところで、近年ヒストンの研究を中心に、タンパク質のメチル化状態がメチル基転移酵素と脱メチル化酵素の活性のバランス、即ちメチル化と脱メチル化により調節されることが明らかとなってきた。上述したように、候補としての可能性が高いメチル化酵素ホモログをノックダウンしても、有意なMMAの減少が認められなかったことは、そもそも脱メチル化酵素の作用がメチル化状態の変化をより検出し難くしている可能性が考えられた。しかし、これまでメチル化タンパク質の脱メチル化は、主としてメチルリジンの研究が先行しており、アルギニンの脱メチル化はほとんど解っていない。そこで、今年度はアルギニンモノメチル化責任酵素を単離する前段階として、アルギニン残基の脱メチル化酵素について明らかにし、これを抑制した条件でアルギニンモノメチル化酵素の同定を試みることにした。まず、これまで哺乳類その他の生物種で報告されているタンパク質及び核酸の脱メチル化酵素の線虫オルソログ24種をクローニングし、これに対するノックダウンコンストラクトライブラリーを構築した。次いで野生型に対して上記脱メチル化酵素候補遺伝子をノックダウンし、メチルアルギニン残基の追跡を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度約240種のメチル基転移酵素ノックダウンライブラリーを用いたスクリーニング戦略として、まず手始めに最も可能性のある線虫PRMTファミリーメンバーから検討したが、有意な候補が得られなかった。このことはタンパク質のメチル化状態が、脱メチル化とメチル化のバランスにより制御されており、脱メチル化酵素の活性により、アルギニンメチル化状態を検出し難くなっていることが原因である可能性が考えられた。そこで他生物種におけるタンパク質脱メチル化酵素としてLSD1ファミリー(2種)及びJMDHファミリー(14種)を、また核酸の脱メチル化酵素としてTETファミリー(3種)及びALKBファミリー(5種)の各遺伝子の線虫オルソログ計24種のノックダウンコンストラクトを作成した。これまで上記の脱メチル化酵素には、メチルアルギニンの脱メチル化活性が報告されていないが、今回のスクリーニングで新たに上記活性が明らかになる可能性も期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
脱メチル化酵素探索には、差し当たり野生型線虫を用いるが、これまでの我々の研究において、prmt-1欠損変異体ではADMAが消失するのみならず、野生型に比べMMAの減少や逆にSDMAが増加することが明らかになっている。またprmt-5欠損変異体SDMAが消失することも解っていることから、これらの変異体をノックダウンの宿主に用いることで、メチルアルギニンが増加するクローン(=アルギニン脱メチル化酵素の候補遺伝子)が得やすくなる可能性がある。脱メチル化酵素が得られたら,その変異体を作成し、これを宿主に本来の目的であるアルギニン残基のモノメチル化酵素の探索を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、2年目に質量分析関係の消耗品(酸加水分解用バイアルや分析カラム)が多数必要になることを想定していたが、使用済みのバイアルを硝酸で洗浄して再利用したり、分析カラムの前に装着するガードカラムを頻繁に交換してカラムを保護することで、経費をかなり節約できるようになった。 そこで次年度に、さらに分析器具やその他試薬類の購入費用に充当する計画である。
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