2018 Fiscal Year Research-status Report
新規抗がん剤創製のためのテルペノイド配糖体の合成およびプローブ調製に関する研究
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17K01952
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Research Institution | Yokohama College of Pharmacy |
Principal Investigator |
庄司 満 横浜薬科大学, 薬学部, 教授 (30339139)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ジテルペン / 抗腫瘍活性 / 全合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
コチレニンAは、Cladosporium属の糸状菌から単離、構造決定されたジテルペン配糖体で、ヒト急性白血病細胞HL-60に対し分化誘導活性を有する。また、コチレニンAとインターフェロンとの併用で、卵巣がん細胞を移植したマウスの60%以上が完全に治癒したうえ、副作用は観察されなかった。本生物活性は、コチレニンAが真核細胞生物に普遍的に存在する14-3-3タンパク質およびリン酸化タンパク質と三者会合体を形成し、細胞内シグナル伝達に関与して発現すると考えられている。コチレニンAは、新規抗がん剤リード化合物および生化学研究用ツールとして需要が高まる一方、生産菌の変異により、現在は培養による供給が困難である。そのため、有機合成的手法による供給が切望されているが、高度に歪んだ5-8-5員環を有する母骨格および複雑な糖部位は合成の難易度が非常に高い。現在まで、コチレニンAの母骨格部分の合成が一例報告されているのみで、単離から40年以上経った現在でも、全合成論文は出版されていない。 本研究では、コチレニンAの量的供給を可能にするため、コチレニンAの2つの五員環セグメントをそれぞれ構築したのち、これらを連結しながら八員環を形成する収束的手法で合成することとした。そのためには、各セグメントを大量合成に適した手法で調製することが必須である。これまで、五員環を有するC環部セグメントの合成に成功していたが、小スケールでは立体選択的に進行していたメチル化が、大量合成において選択性が低下する問題があった。当該年度では、多段階合成を円滑に進めるために、細いチューブ内で反応を進行させるマイクロフロー法を用いるセグメントの効率的合成を検討した。その結果、フラスコで反応させる従来法で-40℃以下の低温を必要としていた反応を、選択性を損なうことなく0℃で進行させることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
標的化合物の中心骨格である3環性部位のうち、2つの五員環の炭素骨格および酸素官能基を立体選択的に合成した。また、多段階合成を容易にするために、マイクロフロー法を用いるセグメントの大量供給法を見いだした。さらに、これらを連結しながら3つ目の環構造を構築する手法を種々検討し、中央部の八員環骨格を構築することができた。現在、全合成達成に必要な官能基の位置および立体選択的導入を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
八員環の構築法を開発してアグリコン部を合成するとともに、コチレニンAの量的供給を可能にするルートを検討する。
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Causes of Carryover |
・研究開始当初に予想された研究計画実施上の困難を、効率良く乗り越えることができた。 ・研究用試薬・溶媒等の節約と有効利用に努めた。 ・今後、研究課題をより一層推進するための研究環境整備に使用する計画である。
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