2018 Fiscal Year Research-status Report
次世代型合成法を用いた生理活性糖鎖の合成とその医学的利用技術の創出
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17K01963
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
山口 真範 和歌山大学, 教育学部, 准教授 (20400129)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 糖鎖 / オリゴ糖 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖鎖は核酸、タンパク質に続く第三の生命鎖として認識され、その多くの生理作用に大きな注目が集まっている。細胞間の認識、情報伝達、分化、増殖、免疫応答など生命を維持していく上で必須の生命現象を糖鎖が司っていることが明らかにされてきた。すなわち、糖鎖が担う役割や経時的な発現を追跡することは、未知の生命現象を明らかにすることができ、炎症や病気の発症メカニズムを解明できる。このような背景のもと糖鎖関連研究は、国内外において非常に重要な研究内容として位置づけられている。 糖鎖の利用法は多岐にわたり医薬品、食品、化粧品などに応用されている。糖鎖の機能解明には多様な糖鎖が一定以上必要となるがその合成は難度が高く、現状では十分な供給が困難となっている。本研究は、これまでに受けた若手研究B及び基盤研究Cにおいて開発してきた「次世代型合成法」を更に発展させることにより課題を解決し、糖鎖の関わる生命現象を解明するための要となる糖鎖分子プローブおよびオリゴ糖鎖を網羅的に創出する。これらの糖鎖を用いて、糖鎖型医薬品の開発、糖鎖型ガンワクチンの創出、ガンの分子イメージング技術への応用を行い、生化学・薬学・医学研究の進展に大きく貢献することを目標とする。 本年度においては、目的としたオールマイティーなグリコシル化法の開発のための重要課題であったシアリル化反応を中心にメソッド開発を行った。新たな方法論の開発に成功し、高効率的なシアロ糖鎖合成法を見出すことができた。 そのメソッドを展開することにより多数の生理活性オリゴ糖、およびそのプローブの合成を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の一つのキーポイントであるシアリル化反応において新なメソッド開発に成功した。開発以前のシアリル化反応は、マッチした基質を用いた場合、8割前後、ミスマッチの基質の場合は1割以下という収率にとどまっていた。 今回のメソッドに従えば、おおむね8割以上の収率を得ることが出来るようになった。このことにより、シアロ糖鎖ライブラリーの構築が加速され、多数のシアロ糖鎖およびそのプローブの合成に成功し、合成が困難とされている硫酸化シアロ糖鎖の合成においても糸口を掴んだ。 よって、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までに開発を行ったグリコシル化反応メソッドを組み合わせ、複雑な構造を有する糖鎖の簡便合成を達成する。本研究実施期間中に十分な糖鎖ライブラリーの構築を完了する。 有用な生理活性を有する構造であり、ガンの糖鎖抗原やウイルスなどのレセプターとして知られるシアロ糖、硫酸化糖を中心に網羅的合成を達成する。ついで、糖鎖をリガンドとしているウイルス、病原菌、毒素のそれぞれのタンパク質と相互作用(結合および解離の速さ)を解析する。また実際に合成糖鎖をウイルス及び細胞と共培養することによりin vitoroでの作用を明らかにする。それらのデータを基に、より親和性の高い糖鎖構造をデザインして合成し、新な防御システムを構築する。 最後に、更に高活性を有する類似糖鎖をデザインし、網羅的に合成して、それらの糖鎖を腸管免疫療法や糖鎖サプリメント療法へつなげる。
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Causes of Carryover |
(理由)固定化酵素の作成、および糖鎖合成法開発において大きな技術革新に成功した。このことにより想定したよりも、検討実験に消費する試薬や酵素の購入費用を抑えることが出来たため。 (使用計画) 研究試薬の購入に充て、有効に利用する。
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