2018 Fiscal Year Research-status Report
一世代コンディショナル変異導入法を用いた神経疾患原因遺伝子の生理機能解析
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17K01972
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
阿部 学 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (10334674)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 神経疾患原因遺伝子 / ゲノム編集 / コンディショナル遺伝子発現制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内における遺伝子の生理機能解析法の中でも特に強力な技術として、Cre-loxP組換え系を用いたコンディショナルノックアウト法が発展してきた。その原理を利用した遺伝子発現系として、ノックイン-トランスジェニック型でCre組換え依存的に強力なプロモーターにより遺伝子を発現させるシステムや、数種のloxP 類縁配列と組み合わせDNA配列を逆位にすることで遺伝子発現を制御するFLEx(またはDIO)と呼ばれるシステムなども存在するが、多くの場合は内在の遺伝子構造と異なっていることが原因で、正確な生理機能評価が難しいことが問題となっている。研究代表者は、FLExシステムと異動物種由来ゲノム等を用いた新規コンディショナル遺伝子発現制御法を開発することにより、この問題を解決できる可能性を見出した。 本研究の目的は、開発された新規遺伝子発現制御法の有効性を確認すると同時に、遺伝子変異-中枢神経系回路発達-表現型の関連性を捉えやすい小脳発達期をモデルとして選択し、生理機能が明らかでない2つの神経疾患原因遺伝子、炭酸脱水素酵素関連タンパクCA8(マウス遺伝子名Car8)および翻訳伸長因子EEF1A2 (Eef1a2)とそれらの関連分子を主な変異導入の対象として、小脳発達の分子機序の一端を明らかにすることである。 一方、従来の遺伝子改変マウス作製が遺伝学、発生工学を中心的技術とするため長い実験期間を要するという最大の問題については、近年著しく発展しているゲノム編集技術を適用することで解決可能だと考えられた。研究代表者は簡便なノックインマウス作製法であるマウス初期胚に対する電気穿孔法を用いることにより、既に一世代-低分子タグノックインマウス作製技術を確立しており、より簡便に長い配列のノックインを可能とするための技術開発も行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本課題申請時に提案した新規遺伝子発現制御法については、比較検討されたDNA要素により構成されたカセットを用いて、他大学との共同研究ベースで3系統のノックインマウスを樹立できた。1系統については遺伝子発現が完全に予想通りに制御されていることが既に確認されていたが、さらに1系統についてCre依存的に組換えが生じ変異遺伝子が発現することが確認された。 さらにこのアイディアを発展させ、複数のスプライスサイトを組み合わせ構築した人工イントロンを用い、標的遺伝子のエクソン-イントロン構造に依存せず全遺伝子へ対応可能なコンディショナルノックインシステムの開発を試みた。培養細胞においてこのシステムの動作が確認できたのでマウス個体への適用を試みたが年度内での変異導入マウスの樹立には至らなかった。マウス初期胚への電気穿孔法をゲノム編集技術に適用する手法の中でも、より簡便であるGONAD(Genome-editing via Oviductal Nucleic Acid Delivery)法を用いることで変異マウス作製効率を大幅に高めることができていたが、一般的な認識としてGONAD法の適用は困難であるC57BL/6系マウスにおいてさらに効率を高めるための排卵誘発ホルモン投与条件等について検証を行った。本課題での解析対象遺伝子である、小脳発達に関連する神経疾患原因遺伝子CA8、EEF1A、IP3受容体について各種コンディショナル変異導入を試みたが、より長い配列のノックインには現時点では成功しておらず、さらなる技術開発が必要である。現在、長鎖ノックインのためのドナーDNAとしてアデノ随伴ウイルス(AAV)を用いる系を確立しつつあり、次年度前半での各種ノックインマウス作製を目指す。 以上の通り、本課題の進捗状況はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
新規遺伝子発現制御法については、すでに2系統でCre依存的に組換えが生じ変異遺伝子が発現したことが確認されやので、現在この方法論に関する論文を作成中である。開発中であるコンディショナルノックインシステムについては、予備実験よりそのノックインカセットが動作することは確認されていたので、DNA要素をゲノム編集に適した短い配列に改良したので、GONAD法によるノックインを試みる。それが困難であると判断された場合にはGONAD法のみでなくTAKE(Technique for Animal Knockout system by Electroporation)法、または安定したノックインマウス作製方法である微量注入法を用いて作製を急ぐ。一方、ノックインマウス作製に用いるべきドナーDNAの種類については複数あり、ごく最近まで一本鎖DNAが最適であると一般的に認識されていたが、前述の通りAAVを用いた系について諸条件を検証して技術的確立を目指す。また、安定的にC57BL/6N系ノックインマウスを作製できているという成果について、現在検証中の排卵誘発ホルモン投与条件のデータも含め論文発表を目指す。解析対象遺伝子である、小脳発達に関連する神経疾患原因遺伝子CA8、EEF1A、IP3受容体について各種コンディショナル変異導入に着手したところであるが、長い配列のノックインマウスが安定的に作製可能となるまでは、申請時提案通りの各種の点変異等のノックインマウスの作製を先行させる予定である。特に研究協力者が得たCA8遺伝子生理機能に関する研究結果(未発表データ)について討議したところ、最も重要であるのはIP3受容体遺伝子を標的としたノックインマウスであるという見解で一致しており、その作製を急ぐ。
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Causes of Carryover |
今年度はほぼ申請時計画通りに研究を遂行したが、初年度に繰越金が生じていたためその金額と同程度の約51万円を次年度に繰り越す必要が生じた。初年度において当初計画より使用費用が低額になった理由は主に二点あり、一点は、ノックインマウス作製に適用した方法を早い段階でGONAD法に決めたことである。本課題申請時に主に用いていた方法はTAKE法であり、こちらは手技的に簡便であるものの使用する動物数に関しては一度の実験に多数 (10頭以上)のマウスを使用するため、比較的コストは高い手法である。それに対してGONAD法では一度に2~3匹程度を使用するだけであり、また試薬量もTAKE法に比べ数十分の一である。もう一点は、GONAD法を適用する際に要すると見込まれていた予備実験量の少なさである。研究開始当初よりC57BL/6系マウスへの適用は困難であると予想されていたために相当量の予備実験を想定していたが、実際に開始してみるとほぼ条件検討不要でノックインマウスの作製に成功することができた。また、ゲノム編集技術に必須の試薬に関して、この技術の普及と市場原理のため全体的に価格が低くなってきたことも関係すると思われる。ただし、前述の通りGONAD法での長い配列のノックインには成功していないため、次年度ではTAKE法、微量注入法を含めた条件検討に繰越金を使用する予定である。
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Research Products
(19 results)