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2020 Fiscal Year Research-status Report

一世代コンディショナル変異導入法を用いた神経疾患原因遺伝子の生理機能解析

Research Project

Project/Area Number 17K01972
Research InstitutionNiigata University

Principal Investigator

阿部 学  新潟大学, 脳研究所, 准教授 (10334674)

Project Period (FY) 2017-04-01 – 2022-03-31
Keywords神経疾患原因遺伝子 / ゲノム編集 / コンディショナル遺伝子発現制御
Outline of Annual Research Achievements

生体内における遺伝子の生理機能解析法の中でも特に強力な技術として、Cre-loxP組換え系を用いたコンディショナルノックアウト法が発展してきた。その原理を利用した遺伝子発現系として、ノックイン-トランスジェニック型でCre組換え依存的に強力なプロモーターにより遺伝子を発現させるシステムや、数種のloxP 類縁配列と組み合わせDNA配列を逆位にすることで遺伝子発現を制御するFLEx(またはDIO)と呼ばれるシステムなども存在するが、多くの場合は内在の遺伝子構造と異なっていることが原因で、正確な評価が難しいことが問題となっている。研究代表者は、FLExシステムと異動物種由来ゲノム等を用いた新規コンディショナル遺伝子発現制御法を開発することにより、この問題を解決できる可能性を見出した。 本研究の目的は、開発された新規遺伝子発現制御法の有効性を確認すると同時に、遺伝子変異-中枢神経系回路発達-表現型の関連性を捉えやすい小脳発達期をモデルとして選択し、生理機能が明らかでない2つの神経疾患原因遺伝子、炭酸脱水素酵素関連タンパクCA8(マウス遺伝子名Car8)および翻訳伸長因子EEF1A2 (Eef1a2)とそれらの関連分子を主な変異導入の対象として、小脳発達の分子機序の一端を明らかにすることである。 一方、従来の遺伝子改変マウス作製が遺伝学、発生工学を中心的技術とするため長い実験期間を要するという最大の問題については、近年著しく発展しているゲノム編集技術を適用することで解決可能だと考えられた。研究代表者は簡便なノックインマウス作製法であるマウス初期胚に対する電気穿孔法を用いることによ り、既に一世代-低分子タグノックインマウス作製技術を確立しており、より簡便に長い配列のノックインを可能とするための技術開発も行う。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

4: Progress in research has been delayed.

Reason

本課題申請時に提案した新規遺伝子発現制御法については、これまでに、比較検討されたDNA要素により構成されたカセットを異なる5つの遺伝子を標的としてノックインした ES細胞を作製し、他大学との共同研究ベースで計6系統のノックインマウスを樹立できた。そのうちの1系統については既に予想通りの標的遺伝子の発現制御の確認まで進んでおり、他の系統についても確認中である。さらに開発を進めていた、標的遺伝子のエクソン-イントロン構造に依存せず全遺伝子へ対応可能なコンディショナルノックインシステムについては、培養細胞での予備実験により動作確認を終えた後、マウス個体に適用するようGONAD (Genome-editing via Oviductal Nucleic Acid Delivery) 法にてノックインマウスの作製を試みていた。しかし今年度当初からの新型コロナウイルス感染症対応による動物実験の一時抑制と、年度後期において発生工学的実験を支援する主たる研究協力者一名の突然の離職があり、研究遂行が著しく困難な期間が生じたため、マウス樹立には至っていない。本課題での解析対象遺伝子である、小脳発達に関連する神経疾患原因遺伝子CA8、EEF1A、IP3受容体についてもノックインマウス作製を試みていたが、上記の理由で現時点では達成できていない。長鎖DNAノックインについては実験条件検討と技術改良により成功率を高めることができたため、次年度でのマウス樹立を目指している。
予期していなかった研究環境の悪化のため十分に研究を遂行することができず、本課題の進捗状況は「遅れている」と判断した。

Strategy for Future Research Activity

新規遺伝子発現制御法については、すでに1系統のマウス生体内で予想通りに制御されていることが確認されたので、残りの5系統についても同様に制御可能であることが確認されたならこの方法論に関する論文の発表を目指す。 開発中であるコンディショナルノックインシステムについては、予備実験よりそのノックインカセットが動作することは確認されたが、ゲノム編集によるノックインには配列が短い方がノックイン効率は高いことが示されているので、そのDNA要素を改良して配列を短くしていく。現在はGONAD法によるノックインを試みているが、それが困難であると判断された場合にはGONAD法のみでなくTAKE(Technique for Animal Knockout system by Electroporation)法、または安定したノックインマウス作製方法である微量注入法を用いて作製を急ぐ。また、前述の通り、安定的にC57BL/6N系ノックインマウスを作製できているという成果についても論文発表を目指している。長鎖DNAノックインマウスが安定して作製可能となってきたため、解析対象遺伝子である、小脳発達に関連する神経疾患原因遺伝子CA8、EEF1A、IP3受容体について各種コンディショナル変異導入を進める。また、共同研究者とCA8遺伝子の生理機能について討議し、IP3受容体よりもむしろ他の遺伝子であるNrxn-Neuroligin複合体との関連性を調べることが重要と考えられたため、新たにそれら遺伝子も対象に含めて研究を進める。なお、研究協力者一名の離職による発生工学的実験遂行への影響に関しては、所属研究室への人員補充により改善される見込みである。

Causes of Carryover

前述の通り今年度は研究を十分に実施できなかったため次年度使用額(約19万円)が生じた。引き続きノックインマウス作製を実施し、論文発表を行うために経費を使用する計画である。
なお、昨年度の時点で次年度使用額が生じた理由は以下の通りである。
「当初計画より当該年度の費用が低額になったためであり、その理由は主に二点ある。一点は、ノックインマウス作製に適用した方法を早い段階でGONAD法に決めたことである。本課題申請時に主に用いていた方法はTAKE法であり、こちらは手技的に簡便であるものの使用する動物数に関しては微量注入法とほぼ同じで、一度の実験に多数 (10頭以上)のマウスを使用するため、コストは高い手法である。それに対してGONAD法では一度に2~3匹程度を使用するだけであり、また使用する試薬量もTAKE 法に比べ数十分の一である。もう一点は、GONAD法を適用する際に要すると見込まれていた予備実験量の少なさである。研究開始当初よりC57BL/6系マウスへの適用は困難であると予想されていたために相当量の予備実験を想定していたが、実際に開始してみるとほぼ条件検討不要でノックインマウスの作製に成功することができた。また、ゲノム編集技術に必須の試薬に関して、この技術の普及と市場原理のため全体的に価格が低くなってきたことも関係すると思われる。」

  • Research Products

    (9 results)

All 2020 Other

All Journal Article (5 results) (of which Peer Reviewed: 5 results,  Open Access: 2 results) Presentation (3 results) Remarks (1 results)

  • [Journal Article] Central dopamine D2 receptors regulate plasma glucose levels in mice through autonomic nerves2020

    • Author(s)
      Ikeda Hiroko、Yonemochi Naomi、Mikami Risa、Abe Manabu、Kawamura Meiko、Natsume Rie、Sakimura Kenji、Waddington John L.、Kamei Junzo
    • Journal Title

      Scientific Reports

      Volume: 10 Pages: 22347

    • DOI

      10.1038/s41598-020-79292-0

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Journal Article] Regulation of hepatic oxidative stress by voltage‐gated proton channels (Hv1/VSOP) in Kupffer cells and its potential relationship with glucose metabolism2020

    • Author(s)
      Kawai Takafumi、Kayama Kento、Tatsumi Shoki、Akter Sharmin、Miyawaki Nana、Okochi Yoshifumi、Abe Manabu、Sakimura Kenji、Yamamoto Hiroyasu、Kihara Shinji、Okamura Yasushi
    • Journal Title

      The FASEB Journal

      Volume: 34 Pages: 15805~15821

    • DOI

      10.1096/fj.202001056RRR

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] Generation of Lungs by Blastocyst Complementation in Apneumic Fgf10-Deficient Mice2020

    • Author(s)
      Kitahara Akihiko、Ran Qingsong、Oda Kanako、Yasue Akihiro、Abe Manabu、Ye Xulu、Sasaoka Toshikuni、Tsuchida Masanori、Sakimura Kenji、Ajioka Yoichi、Saijo Yasuo、Zhou Qiliang
    • Journal Title

      Cell Reports

      Volume: 31 Pages: 107626~107626

    • DOI

      10.1016/j.celrep.2020.107626

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Journal Article] A discrete neuronal circuit induces a hibernation-like state in rodents2020

    • Author(s)
      Takahashi Tohru M.、Sunagawa Genshiro A.、Soya Shingo、Abe Manabu、Sakurai Katsuyasu、Ishikawa Kiyomi、Yanagisawa Masashi、Hama Hiroshi、Hasegawa Emi、Miyawaki Atsushi、Sakimura Kenji、Takahashi Masayo、Sakurai Takeshi
    • Journal Title

      Nature

      Volume: 583 Pages: 109~114

    • DOI

      10.1038/s41586-020-2163-6

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] Decreased Proliferation in the Neurogenic Niche, Disorganized Neuroblast Migration, and Increased Oligodendrogenesis in Adult Netrin-5-Deficient Mice2020

    • Author(s)
      Ikegaya Shunsuke、Iga Yurika、Mikawa Sumiko、Zhou Li、Abe Manabu、Sakimura Kenji、Sato Kohji、Yamagishi Satoru
    • Journal Title

      Frontiers in Neuroscience

      Volume: 14 Pages: 570974

    • DOI

      10.3389/fnins.2020.570974

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 脊髄におけるBEGAIN陽性介在ニューロンの可視化2020

    • Author(s)
      片野泰代, 阿部学, 渡辺雅彦,﨑村建司, 伊藤誠二, 小林拓也
    • Organizer
      第43回日本神経科学大会
  • [Presentation] 大脳基底核間接路のD2受容体発現細胞におけるNMDA受容体のマグネシウムブロックの減少により誘導される運動制御と学習記憶の変化の解析2020

    • Author(s)
      笹岡 俊邦, 齊藤 奈英, 知見聡美, 阿部 学, 川村 名子, 鍋島 陽一, 田井中 一貴, 﨑村 建司, 南部篤
    • Organizer
      第43回日本神経科学大会
  • [Presentation] 異種間移植新生子精巣を用いた遺伝子改変ラット作製の効率化2020

    • Author(s)
      中務胞, 岩崎亜美, 夏目里恵, 阿部学, 崎村建司
    • Organizer
      第67回日本実験動物学会総会
  • [Remarks] 新潟大学脳研究所ホームページ > 研究分野紹介 > モデル動物開発分野

    • URL

      https://www.bri.niigata-u.ac.jp/field/cellular/index.html

URL: 

Published: 2021-12-27  

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