2017 Fiscal Year Research-status Report
アルツハイマー病モデル動物における発症早期の脳波異常解析
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17K01973
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
川原 茂敬 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 教授 (10204752)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 伸郎 金沢医科大学, 医学部, 教授 (10152729)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / 瞬目反射条件付け / 連合学習 / 海馬 |
Outline of Annual Research Achievements |
海馬で観測される同期的リズム活動であるシータ波は、学習・記憶能力と高い相関があることが知られている。本研究では、アルツハイマー病発症の早期検出を目的として、病態モデルの3xTgADマウスにおける学習中および自発行動中の海馬シータ波を解析し、発症前から発症初期にかけて検出されると予想される海馬シータ波の異常と学習・記憶障害との相関を解析する事を目的としている。 平成29年度は、これまで申請者が行ってきた瞬目反射条件付けを用いて、3xTgADマウスの学習障害を早期に発見するために適する課題を検討した。瞬目反射条件付けは、音とまぶたへの刺激を組み合わせて繰り返し与えることにより、音単独でまぶたを閉じるようになる連合学習である。瞬目反射条件付けには海馬依存性のメカニズムが少しずつ異なる複数種類の課題がある。本年度は、①海馬依存性が低い遅延課題、および、②ムスカリン受容体依存性が高く、したがって海馬依存性が高いと考えられる文脈依存的弁別課題の2種類の学習課題を用いて、まだ、学習能力が障害されていないと考えられる2ヶ月齢および4ヶ月齢の3xTg-ADマウスと対照群マウスであるB6/129SV マウスの学習能力を検討した。まず、標準的に用いている1 kHzの音を用いて遅延課題を行ったところ、ADマウス、対照マウスともに学習率が増加しなかった。そこで、音の周波数を2、5、8 kHzと増加させると両マウスともに学習率が増加する傾向が見られた。また、これまで報告されている文献を参考に、光や振動を用いた条件付けも検討したが、それほど改善はされなかった。また、弁別課題として光-音、光-振動などの組み合わせを検討したが、それらも顕著な学習は確認できなかった。検討した中では、8 kHzの音を用いた場合、比較的学習する傾向が見られたので、今後は光と音(> 8 kHz)を用いて検討を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
3xTg-ADマウスと対照群マウスであるB6/129SV マウスともに、アルツハイマー病を発症する前と考えられる2ヶ月齢および4ヶ月齢において、古典的瞬目反射条件付けの遅延課題(海馬依存性は低い)を学習しないと言うことは全くの予想外であった。これはノックアウトマウスの対照群として良く用いられるC57BL/6マウスとは、遺伝的背景がやや異なることに由来すると思われる。予備実験として聴覚性脳幹応答(ABR)を調べてみたところ、5 kHz以下の低音に対する聴覚障害を持つことが示唆されたことから、これが原因の1つであることが推測された。しかしながら、光や振動など、音以外の感覚刺激を用いた条件付けにおいてもそれほどには改善されなかったことから、他に原因がある可能性も残されている。今後は、最適な感覚刺激の検討を行うとともに、瞬目反射条件づけ以外の学習課題も検討する必要があると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)平成29年度の結果を踏まえて、高音(>8 kHz)を用いた瞬目反射条件付けの可能性を検討するとともに、他の海馬依存的学習課題を用いて、月齢の増加に伴う学習行動障害の進行状況をモニターすることを検討する。
(2)学習課題の検討とは別に、通常の行動中の海馬シータ波の記録・解析を進めて3xTg-ADマウスと対照群マウスであるB6/129SV の海馬機能の差を検出できるかどうかを検討する。さらに、薬理的にシータ波 type 1とtype 2を分離し、3xTg-ADマウスと対照群マウスであるB6/129SV における加齢変化の検出可能性を検討する。
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