2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K01974
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
繁冨 英治 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (00631061)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アストロサイト / てんかん / カルシウム / P2Y1受容体 / てんかん重積 / カルシウム感受性タンパク質 / グルタミン酸センサーたんぱく質 / 遺伝子発現解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
アストロサイトのCa2+シグナルにおいてP2Y1受容体は中心的な役割を果たす。このP2Y1受容体をアストロサイト選択的に過剰発現するマウスは、薬物誘発てんかん発作に対する易感受性を示し、脳波に異常スパイクが観察される。しかし、なぜアストロサイト選択的P2Y1受容体過剰発現(P2Y1OE)がニューロンの興奮性を上昇させるのか、そのメカニズムは不明である。アストロサイト及びニューロンの活動の同時Ca2+イメージング(Dual color Ca2+ imaging)を海馬CA1領域を含む急性脳スライス標本を用いて行った結果、P2Y1OEでは電気刺激によって誘発されるニューロンのCa2+応答が延長することを見出した。また、グルタミン酸センサータンパク質を用いたイメージングによりP2Y1OEでは電気刺激誘発グルタミン酸放出が増加することを見出してきた。これらの結果より、アストロサイトのP2Y1受容体依存的なCa2+応答がニューロン活動を延長・増強する原因として、アストロサイトを介したグルタミン酸放出増加の可能性が示唆された。Dual color Ca2+ imagingとグルタミン酸イメージングデータの詳細な時空間解析により、グルタミン酸放出増加を起こすメカニズムは、アストロサイト由来の直接的なグルタミン酸放出を介するのではなく、別の因子を介する可能性が示唆された。P2Y1OE由来の単離アストロサイトからRNAを抽出しRNA-seqを行ったところ、有意に発現増加及び低下する分子を見出した。発現増加する分子の1つについて詳細に検討したところ、この候補分子が、P2Y1OEのアストロサイトにおいて発現増加していること、また、興奮性シグナル分子として働きニューロンのCa2+応答を制御することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
P2Y1OEのアストロサイトにおけるトランスクリプトーム解析から、アストロサイト由来興奮性シグナル分子の候補を絞り込んだ。候補分子がアストロサイトにおいて発現増加していることを免疫組織化学法にて確認し、また興奮性シグナル分子となり得ることをイメージング実験で示した。更に、脳波解析によりP2Y1OEでは異常スパイクが有意に増加していることを見出した。以上により、概ね期待される成果を上げることができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
RNA-seqによって得られたアストロサイト由来興奮性シグナル分子がてんかん発作に関連した異常スパイクの発生に寄与するかについて抗体を用いた興奮性シグナル分子の機能阻害を試み明らかにする。また、候補分子のゲノム編集による遺伝子欠損の影響を検討する。ゲノム編集用のベクターは共同研究を通じて作成が進んでいる。これらの実験結果を加えてこれまでの成果まとめ、国際誌に報告する。
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Causes of Carryover |
動物飼育室で発生した感染事故のため動物使用が制限され、加えて、新型コロナウイルス感染症で大学へのアクセスの制限があったため、一部の実験が未実施である。予定の実験を速やかに行い残額は目的に応じて使用する。
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