2017 Fiscal Year Research-status Report
母性記憶形成における脳内自己報酬系と概日時計の役割
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17K01986
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
冨永 恵子 (吉野恵子) 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (60256196)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | シナプス可塑性 / 母性記憶 / 報酬系 / 概日時計 |
Outline of Annual Research Achievements |
母性行動は本能行動の一種であるが、げっ歯類の研究から、適切な母性行動を発現するためには、母性行動の経験が必要である事がわかっている。母性行動の経験により、仔と数週間分離した後にも、母性行動を即時に発現できるようになり、この経験による母性行動の即時発現を母性記憶という。本研究課題は、マウスの母性記憶の形成に、空間記憶や恐怖記憶形成と同様のシナプス可塑性が関与するかを明らかにすることを目的とし、初年度は以下の結果を得た。母性記憶の形成時には、報酬系に含まれる側坐核と腹側被蓋野でシナプス数の増加が起こった。しかし、空間記憶や恐怖記憶の形成に関わる海馬や扁桃体ではシナプス数の増加は起こらなかった。母性記憶の形成には出産後3日間(仔と接触し、母性行動を経験している期間)の蛋白合成が必要であり、この期間の蛋白合成の活性化が母性記憶形成時のシナプス数増加に関与することが分かった。また、母性記憶形成におけるグルタミン酸受容体の関与を検証するために、長期シナプス可塑性現象の誘発に関与するCa2+透過型AMPA受容体(CP-AMPAR)の阻害剤を投与した結果、母性記憶形成には、母性行動の経験直後のCP-AMPARの活性化が必要であることがわかった。以上より、母性記憶の形成メカニズムには、空間記憶や恐怖記憶形成時に海馬や扁桃体で観察されるシナプス可塑性現象と同様の構造可塑性現象が関与し、それは側坐核や腹側被蓋野を含む報酬系で起こることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
母性記憶形成のメカニズムに報酬系における構造可塑性が関与することを、他の脳部位との比較で明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
母性記憶形成における概日時計の役割を明らかにするために、時計遺伝子の改変マウスを用いて検証する。
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Causes of Carryover |
時計遺伝子改変マウスの繁殖の開始が遅れたために、次年度使用額が生じた。次年度は、概日時計の母性記憶形成における役割を調べるため、時計遺伝子改変マウスの飼育・繁殖、野生型マウスの購入・飼育、行動リズムと母性記憶の測定に必要な消耗品の費用に充てる。
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