2017 Fiscal Year Research-status Report
Encoding mechanism of spatial information in the primate entorhinal-hippocampal system.
Project/Area Number |
17K01991
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
田村 了以 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (60227296)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 海馬 / 内嗅皮質 / サル / 周期性徐波 / 空間情報処理 / 睡眠 / グリッド細胞 / 記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
げっ歯類の研究より,内嗅皮質にはグリッド細胞など,海馬には場所細胞などの存在が知られており,これらの細胞集団からなるネットワークが周期性徐波(シータ波)の時間的枠組みの中で活動することにより,記憶の空間的文脈が符号化されると考えられている.一方,内嗅皮質-海馬系の空間情報符号化に関する霊長類(ヒトを含む)の研究は少なく未解明の点も多い.本研究では霊長類の内嗅皮質-海馬系による空間情報の符号化機構,とくに周期性徐波の関与を明らかにするため,サルが場所移動課題を遂行中に内嗅皮質と海馬(歯状回やCA1領域)から神経(電場電位とニューロン)活動を同時記録し,①内嗅皮質ニューロンの空間応答特性,②内嗅皮質での周期性徐波の有無および電場電位位相とニューロン発火との時間関係,③内嗅皮質と海馬との神経活動相関を検討する.本年度は1頭のサルを用い、まず直線走路の走行訓練と記録実験室内での睡眠訓練を施行後、脳定位固定操作のための歯科用セメント製ヘッドキャップをサルの頭部に外科的に取付けた。次に内嗅皮質の位置を正確に同定するため、貫通路を刺激しながら海馬で誘発電位を記録した。刺激電極と記録電極を系統的にシフトさせながら数トラック分の深部プロフィールを作製し、歯状回での誘発電位が最大となる脳定位座標を決定した。この部位に刺激電極を留置した状態で内嗅皮質に向けて神経活動記録電極を刺入し、内嗅皮質における誘発電場電位とニューロン活動を記録・解析した。その結果、内嗅皮質での誘発電場電位のプロフィール作製には一定の成功を収めたが、まだコリジョンテスト(ニューロンの活動電位発生に同期して神経軸索を刺激すると、順行性と逆行性の活動電位が衝突して、逆行性刺激による活動電位発生が見られなくなる現象)陽性例がなく、歯状回と直接結合を有する内嗅皮質の部位の同定には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
手術前の場所移動課題訓練およびヘッドキャップ取付け手術は順調に進んだが、手術後の再訓練でサルが頭部をブルブルッと振る行動(シェーキング)を頻回に行うようになり、この抑制にかなりの時間を要している。シェーキングが起こると、記録電極に動きが生じニューロン活動を安定して記録することができなくなると同時に、電極刺入部位周辺の神経組織の微細損傷が生じるため、後日に同じ電極刺入トラックで良好な神経活動記録を得ることが困難となる。従って、訓練によりシェーキングを減らすことは、本研究において極めて重要なステップである。
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Strategy for Future Research Activity |
サルにとってシェーキングは自然な行為なので完全に抑制することは困難であるが、現時点での行動訓練を継続するとともに、シェーキングを助長する原因(たとえば感染などによるヘッドキャップ付近の皮膚の状態不良や、歩行移動時の頭部への記録ラインの接触など)を抑制することにより頻度を減少させるべく努める。これまでの人員に加え次年度は1名の研究員を動員し、研究の推進を図る。
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Causes of Carryover |
理由:サルのシェーキングを抑えるための行動訓練に予想以上の時間を要し神経活動記録実験が遅れたため、記録実験に関わる人件費の支出がなくなった。
使用計画:次年度中に神経活動記録実験の遅れを取り戻す予定であり、記録実験セッション数が増えるので、その分の人件費を増やす。
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Research Products
(10 results)