2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K01995
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
内田 豪 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 専門職研究員 (50321732)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 下側頭葉視覚連合野 / 視覚情報表現 / 顔 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、サルの下側頭葉視覚連合野(物体の形の視覚的認識に不可欠な脳の領野)で、顔を顔以外のカテゴリーの物体像と識別するために必要な視覚情報、および顔による個体識別に必要な視覚情報がどのように表現されているのかを明らかにし、それらの情報表現の間の関係を階層性に着目して探ることである。平成29年度は、実験の準備を行った。まず、サルに提示する物体像のセットを準備した。物体像のセットは顔、動物、人工物など複数のカテゴリーで構成される。顔は、複数の個体の色々な向きや表情の顔画像で構成される。各カテゴリーに属する物体像の数は多ければ多いほどカテゴリーを正確に表現出来る。また、多様性の確保も重要である。例えば、車というカテゴリーであれば、出来るだけ多くの車種やボディータイプの車の画像を用意することが好ましい。同様の理由から各個体についても出来るだけ多くの、かつ多様性に富んだ顔画像を用意した方が良い。そこで、各カテゴリーにつき平均数百枚、各個体につき平均20枚、全部で3000枚の画像を用意した。画像を用意するに当たっては、物体像そのものの大きさや、背景の違いによる影響を取り除くため、物体像の大きさを一定に調整し、かつ背景を取り除くことを行った。 本研究では複数の電極を用いて、多数の神経細胞から多数の視覚刺激に対する応答を記録、解析する。そこで、処理能力の優れたコンピュータを購入し、実験データの取得、解析に必要なプログラミングを行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、複数の電極を用いて、多数の神経細胞から多数の視覚刺激に対する応答を記録、解析する。このため、処理能力の優れたコンピュータを購入し、実験データの取得、解析に必要なプログラミングを行っていた。ところが、その後の電極等の技術的進展により、当初予定していたよりも多くの細胞から、より多数の視覚刺激に対する応答が記録出来るようになった。本研究では、出来るだけ多くの細胞の出来るだけ多くの刺激に対する応答が記録出来るのが望ましい。そこで、本研究でも新しい技術を取り入れて実験を行うことにした。しかし、これに対応するためにはコンピュータのプログラムにさらなる工夫を施す必要がある。それを行ったために当初予定していたよりも研究が遅れた。
|
Strategy for Future Research Activity |
実験の準備が整ったので実験を開始する。実験では、物体像に対する神経細胞の応答を記録する。偏りをなくすため、物体像はランダムに順次サルに提示する。細胞応答の記録は、下側頭葉視覚連合野(IT野)を露出して微小電極を挿すことで行う。微小電極には、その長さ方向にいくつかの微小な記録サイトが並んでおり、電極挿入位置にある多数の細胞の活動を一度に記録出来る。記録する細胞の偏りをなくすため、IT野上の広い範囲に分布した多くの場所で、電極を挿しては細胞活動を記録するということを繰り返す。なお、細胞応答は麻酔下にあるサルから記録する。 細胞応答の記録をすべて取り終えたら、実験データを解析する。IT野では互いに近くにある細胞の物体像選択性が似ており、それらの細胞が機能コラムと呼ばれる機能的な構造を形成していることが知られている。そこで、記録された細胞応答を電極挿入位置毎に平均して機能コラムの物体像選択性を求める。 続いて、L1正則化ロジスティック回帰と呼ばれる機械学習のアルゴリズムを用いて、物体像のクラス分けに必須な機能コラムの集合を同定する。また、その集合のIT野上での空間分布を調べる。ここでは、二つのクラス分けを行う。一つは、顔対顔以外の物体像というクラス分けである。もう一つは、ある特定のヒトあるいはサルの顔対それ以外のヒトおよびサルの顔というクラス分けである。最後に、結果を検討して問題点があれば洗い出し、もう1頭のサルで実験を行う。
|
Causes of Carryover |
本研究では、複数の電極を用いて、多数の神経細胞から多数の視覚刺激に対する応答を記録、解析する。このため、処理能力の優れたコンピュータを購入し、実験データの取得、解析に必要なプログラミングを行っていた。ところが、その後の電極等の技術的進展により、当初予定していたよりも多くの細胞から、より多数の視覚刺激に対する応答が記録出来るようになった。本研究では、出来るだけ多くの細胞の出来るだけ多くの刺激に対する応答が記録出来るのが望ましい。そこで、新しい技術を取り入れて実験を行うことにし、コンピュータのプログラムにさらなる工夫を施した。それを行ったために、当初昨年度後半に開始する予定であった実験の開始が遅れて今年度にずれ込んだ。次年度使用額は、この実験の実施に必要な費用が繰り越されたものであり、今年度実験を実施するために使用する予定である。
|