2017 Fiscal Year Research-status Report
Freedom, Development and Indigenous People: Case of Mexico
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17K02001
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
受田 宏之 東京大学, 教養学部, その他 (20466816)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | メキシコ / 先住民 / オトミー(語族) / 自由 / 貧困 / 多文化主義 / 社会運動 / ビデオ製作 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、年度内に消化せねばならない予算があったことと学務に追われたため、本科研を用いた海外出張はしていない。しかし、メキシコには2017年11月と2018年3月の二度訪れ、計2週間強、本研究にかかわる調査活動に従事した。協力研究者であるINAH(メキシコ国立人類学歴史研究所)教授のAlonso Guerrero氏とは緊密に連絡を取り合い、現地では多くの調査を一緒に行い、スペイン語での共著の構成について話し合った。 メキシコでは、先住民(オトミー語族)移住者コミュニティのリーダーや彼らをサポートする都市民衆運動組織、開発NGOにインタビューを実施し、また、先住民自身が主体的にかかわるビデオ製作の準備をした。Guerrero氏をメインに共同で行っている先住民のビデオ製作については、彼らの希望した民芸品のプロモーションビデオは既に完成しており、いまは彼らの語りを中心とするコミュニティの歴史ビデオを作成中である。ほかにも、特定の都市民衆運動組織(UPREZ)を扱った新聞記事のデータベースの作成、2017年9月に発生した地震による被災と支援状況に関するデータの収集にも努めた。 本研究にかかわる現地調査以外の活動として、論文1本(査読付き)と学会報告1本のほか、開発援助を論じた編著の第二版の出版が挙げられる。それらのいずれも、最新の研究動向を踏まえつつ豊富な一次資料を用いて、先住民と(援助機関、社会運動、政府など)非先住民との相互作用を明らかにする研究であり、広く定義された先住民の自由が拡大する条件の解明を目的とする本研究に合致するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
世帯数の増加、まとまった時間が取れなかったこと、さらには地震の影響から、当初予定していたオトミー移住者に関する悉皆調査は実施できなかった。それ以外の調査については、調査時間を考慮するならば、おおむね順調に進展したといえる。先住民のエンパワメントを目的の1つに含めるビデオの製作は予想以上に進展し、また、地震という予期せぬ出来事の影響は先住民の脆弱性ならびに社会ネットワークの重要性を照らし出した。 執筆については、先住民移住者のかかわるインフォーマルな政治過程を論じた日本語論文を執筆したが、それを拡充したスペイン語論文を投稿するには至っていない。本テーマでの学会報告を日本で1回(ラテン・アメリカ政経学会の全国大会)行っている。 Alonso Guerrero氏とのスペイン語での共著プロジェクトについては、社会経済面に関する執筆を私が、言語文化面に関する執筆をGuerrero氏が行うということを確認し、全7章からなる構成も決定した。学際的であることと、近年の先住民運動や多文化主義政策の動向を受けてアクション・リサーチの手法も取り入れていることが特徴となる。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度はメキシコにより長く滞在できるため、現地助手の協力を得ながら、親族ネットワークに関する情報も含む、先住民移住者コミュニティの社会経済状況の悉皆調査に主に取り組むこととなる。ただし、比較的新しい不法占拠コミュニティについては、地震で被害を受けたこともあり、先住民移住者の協力をどこまで得られるのか不確定な部分はある。それ以外にも、ビデオの製作や二言語・多文化教育の実践に関する情報の収集に努める。 2018年度にはインフォーマルな政治過程を扱ったスペイン語論文をメキシコの学術誌(Foro Internacional)に投稿するほか、バルセロナとベルリン、東京の三ヵ所で開催される国際学会で本研究にかかわる報告を行う。バルセロナとベルリンでの報告は政治人類学的な内容となるが、東京での報告は経済学を意識して先住民と不平等を論じたものとなる予定である。 Alonso Guerrero氏との共著の執筆に継続的に取り組むが、2018年10月~11月にかけて二週間程度彼を招聘し、先住民研究の動向について東京大学でセミナーを開催してもらうことを考えている。
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Causes of Carryover |
学務に追われまとまった時間がとれなかったことと、年度内に消化しなければならない予算を用いてメキシコに出張したため。 2018年度により長期間、本予算を用いてメキシコに出張することとした。
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Research Products
(6 results)