2018 Fiscal Year Research-status Report
現代中国における地域主義と民族主義:地方行政区画間の競合関係の分析から
Project/Area Number |
17K02010
|
Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
兼重 努 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (80378439)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 地域主義 / 民族主義 / 地方行政区画 / 競合関係 / 中国 / 少数民族 / トン族 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代中国では地方行政区画ごとの文化やアイデンティティを強調する地域主義が存在する。多民族国家であるがゆえ、民族ごとの文化やアイデンティティを強調する民族主義も存立しうる。現代中国では、ひとつの民族集団が複数の地方行政区画に跨って分布するケースが多い。ではその場合、地域主義と民族主義のどちらが優勢なのか? エリート層と一般民衆の間では違いがあるのか? 本研究の目的は、3つの省と10以上の県に跨って住むトン族の事例をもとに、これらの問いに答えることである。 従来、政治的境界と民族集団の関係性の研究において国境の果たす機能が注目されてきた。これに対し本研究では、省境や県境のもつ諸機能を新たに明らかにすることにより、政治的境界と民族集団の関係性の研究に新たな領域を開拓する。 本研究では地方行政区画間の競合関係=せめぎあい(「横の関係」)の分析を新たに俎上にのせる。トン族の場合、民族文化をめぐる地方行政区画の間の競合関係のうち、最も顕著で先鋭的な事例は、トン族大歌(アカペラ音楽)をめぐって発生しており、2省4県=三江トン族自治県(広西)、従江県、黎平県、榕江県(貴州省)が深く関与している。 ①トン族大歌の観光利用、商標化や国家・世界級の無形文化遺産への登録に伴い、2省4県がそれぞれ発している地域主義的な言説および関連する政策について、前年度に引き続き網羅的に明らかにすること、および②トン族大歌を利用した観光開発を進めている村で聞き取りと観察を行い、地方政府が発する地域主義的な言説や政策の、地元民のトン族大歌と民族アイデンティティに対する影響について明らかにすることを課題とし、貴州省黎平県、従江県、広西壮族自治区三江県の文化・観光関係の行政機関、観光案内所、および観光開発を進めているトン族の村々を訪れた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地を訪れ、ほぼ予定どおり関連資料を収集することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
特に大幅な研究推進上の変更はない。次年度も予定通り関連資料の収集・分析を重ねていく予定である。
|
Research Products
(2 results)