2020 Fiscal Year Research-status Report
Changing environment and vanishing local knowledge
Project/Area Number |
17K02014
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 詞子 京都大学, 野生動物研究センター, 特任研究員 (60402749)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 長期変動 / 植生 / 植物相 / 景観 / 気候変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
調査地である東アフリカ・マハレ山塊国立公園(タンザニア連合共和国)では、温暖化の影響が気象データの分析から認められている。また、こうした地球規模の気候変動の影響による中・長期的変化と、「自然」な長期的変動が起こっていることが、植生や植物フェノロジーからも示唆されている。 今年度は現地調査に赴き、環境の長期的変動をはかる一つの指標としての三度目の植生調査を終了させる予定であった。しかしながら、新型コロナウイルスの世界的感染拡大と、調査地の医療体制の脆弱さに鑑み、最終的には現地調査に赴けないまま年度末を迎えた。この間、状況が好転次第速やかに調査を開始できるよう、植生調査に必要なこれまでの情報の整理をすすめつつ、前年度末までにおこなった調査結果に基づく、詳細な植物個体のマッピング作業を終了させた。さらに、長期的変動が示唆されている、植物フェノロジー(季節動態)資料やその他の資料の電子化作業も継続的におこなっている。 来年度は、是非とも植生、気象、植物フェノロジー、植物知識についての現地調査をおこないたいと考えているが、現時点でもいまだ調査再開の見通しが立っていない。そこで、調査再開できない場合の新たな調査・研究の内容や方法の模索をおこなったところ、本調査地のパイオニア研究者が遺した、植物にかかわる手書き資料などを含む資料が未整理の状態で保管されており、こうした過去の資料から植物相・植物リストデータのアップデートや、本研究が扱う植生変化に関わる資料が収集される以前の植生情報などもある程度は得られるのではないかという感触を得た。そこで、次年度以降はこうした過去資料を整理し、手持ちの植物リスト(現地名との対応図鑑)データとの照合をすすめ、過去の植物相や景観についての分析を、文献資料とともに進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルスの世界的感染拡大の影響により、予定していた現地調査をいっさいおこなうことができなかったため、植生変化にかかわる資料や、植物の在来知にかかわる資料収集がいっさいできなかったため。植生調査を完了できないことにより、その結果をもとにおこなうべき植物季節動態についての分析も進めることができなかった。ただし、手持ちの資料の電子化作業はおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の大きな目的でもある、植物についての在来知や植生にかかわる現地調査をおこなうことが、第一の目標である。残念ながら、現時点では、日本国内でも新型コロナウイルスの変異型が猛威をふるっている状況であり、調査地についてはもともと医療体制が脆弱なこともあり、調査再開の見通しがいまだ立たない。 そこで、国内にとどまったままでも可能な、植生変化や植物リストのアップデートに資する研究調査として、新たに当該地域の先人研究者の遺した資料を最大限活用した調査、研究をおこなう。具体的には、植物にかかわる手書き資料や、過去の植生がうかがえる写真資料などを整理し(現状ではその他の資料とともに未分類の状態で保管されている)、可能なものについては撮影や電子スキャンなどの電子化をおこない、分析に使用できるようデータベース化をおこなう。その上で、個別の植物については自ら現地で収集した資料と照合しつつ植物図鑑データを随時アップデートするとともに、文献資料などとも合わせて、過去の植物相や景観についての分析をおこなう。並行して、調査再開時にスムーズに開始できるよう、準備を引き続きすすめる。
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Causes of Carryover |
現地調査のために使用すべく資金を使わないようにし続けていたが、結果的に新型コロナ・パンデミックのため渡航がかなわず、次年度使用額が生じた。2021年度も同様に見通しを立てられないため、新たに着手する、過去資料の電子化に必要な支出等を速やかにおこなうことにする。
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Research Products
(1 results)