2018 Fiscal Year Research-status Report
The Collective Violence of the Chinese Cultural Revolution
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17K02018
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
谷川 真一 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (40410568)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 文化大革命 / 集合的暴力 / 中国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中国文化大革命(以下、文革と省略)の集合的暴力に関する個別の事例研究を比較・統合し、体系的理解に到達することを目的としている。 前年度(H29)に研究協力者との分析概念・枠組みの共有化のための作業を行ったことを受け、 H30年度は事例研究の比較分析を通じて、文革の集合的暴力の分析枠組みの再構築に向けての作業を行った。本年度を通じて研究協力者とのメールを通じ た意見交換を行った。とりわけ有意義であったのは、研究協力者のアンドリュー・ウォルダー(スタンフォード大学)が現在執筆中の地方誌データを用いた文革のマクロ動態についての著書の原稿を通読し、コメントを行うなったことである。同書は、新たなデータを用いた画期的な文革研究であり、本研究とも密接に関係していることから、本研究に進展に大いに役立つであろう。一つ残念であったことは、同書についてさらに意見交換を行うために3月に米国スタンフォード大学を訪問する予定であったのが、事情によりキャンセルせざるを得なかったことである。これに関しては、引き続きウォルダー氏とのメールでの意見交換を行い、令和元年の夏に改めて渡米して意見交換を行いたい。合わせて、同氏との共著論文執筆に向けての研究協力も進めていきたい。 本研究課題に関連する研究成果としては、H29年7月に京都大学人文科学研究所共同研究班「毛沢東に関する人文学的研究」で文革の集合的暴力の思想的起源についての研究報告(「毛沢東の継続革命論再考」)を行った。またそれに関連して、H30年3月に単著論文(「『毛沢東独自路線』再考試論」『近代』第119号、2019年3月)に公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H29~30年度までの計画であった研究協力者との分析概念の共有化、 事例研究の比較分析を通じた文革の集合的暴力の分析枠組みの再構築に向けての作業が概ね計画通りに進展していることによる。具体的には、文化大革命の集合的暴力の発生・拡散のパターン、行為主体、プロセスとメカニズムなど、従来の研究では明らかにされていなかった新たな知見が明らかになりつつある。加えて、集合的暴力の思想的背景についての考察にも一定の進展が見られた。これまでに、査読付き英文ジャーナルに論文が掲載されるなど研究成果の公表にも成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題の最終年度に当たる本年度の計画は以下の通りである。H29から30年度までに、研究協力者との分析概念の共有化、 事例研究の比較分析を通じた文化大革命の集合的暴力の分析枠組みの再構築に向けての作業を行なったことを受け、本年度はその分析枠組みを用いた論文を公表する。具体的には、陝西省における文革の抑圧的暴力についての英文共著論文を研究協力者と取りまとめ、主要な査読付き英文ジャーナルに投稿する。この論文は、文革研究のみならず、集合的暴力の社会科学的研究に理論的に・方法論的に寄与するものとしたい。また、文革の集合的暴力の思想的起源に関しては、単著論文を京都大学人文科学研究所共同研究班「毛沢東に関する人文学的研究」の共著書に発表する予定である。
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Causes of Carryover |
当初計画していた米国スタンフォード大学への出張が事情により取りやめとなり、次年度(R元年)に改めて行う計画であるため。
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