2022 Fiscal Year Annual Research Report
The Labor Regime of the Philippines: Articulation between Liberal Policy and Tradition under Globalization
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17K02019
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
太田 和宏 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (00273748)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フィリピン / 労働 / グローバル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では近年のフィリピンにおける労働市場、労働構造の変化と実態をグローバル要素と従来の慣行が接合した独特の「レジーム」として機能しているという観点から検討したものである。経済のグローバル化に対応しフィリピンでは1980年代以降、労働の柔軟化flexibilizationなどのような労働市場の自由化を推進し、労働法制の改変にも取り組んだ。戦後導入されたアメリカ型の団体交渉による労働権確保システムや、1970年代以降政治化した労働運動も、労働市場の自由化の中で大きく改変を迫られ、雇用主に有利な労働構造が構築されてきた。しかしそれは単に先進国型の近代化された労働市場の創出ではなく、一方で、大量な海外出稼ぎ者=労働力の輸出と、それがもたらす莫大な海外送金が制度化されることと、さらには生産のアウトソーシング構造の一端に位置付けられた児童労働や前近代的家内工業、インフォーマル経済活動が補完的ながら重要な役割を果たすなかで展開している。加えて、英語力を生かしたコールセンターなどのサービス業における国際的BPO産業が隆盛となるなかで、過酷でストレスフルな大量の孤立した高所得労働者を生み出す新傾向も生じてきた。 こうしたグローバル化に対応して導入された新システムが、従来の伝統的な労働構造や労働慣行を駆逐するのではなく、逆にそれらを取り込みつつ「接合」しながら新しいフィリピン型の「労働レジーム」を形成してきたことを、実証的に研究してきた。
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Research Products
(2 results)