2019 Fiscal Year Research-status Report
Globalization and Reformation of 'Local World' in Mainland Sotheast Asia: with a focus on Thailand
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17K02020
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
藤井 勝 神戸大学, 人文学研究科, 名誉教授 (20165343)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 地方 / 地域社会 / 東南アジア大陸部 / 基層社会 / グローバル化 / 社会学 / タイ |
Outline of Annual Research Achievements |
主にタイ東北部とミャンマーの「地方的世界」の現地調査により成果が上がった。 (1)タイ東北部では、継続的に調査してきたマハーサーラカーム県チェンユーン郡の現代的展開をより深く解明することができた。オー・ボー・ト―(タムボン自治体)やタムボン病院の活動の強化により、タムボン・レベルの組織性や統合性が強まり、前近代の「ムアン」の伝統を継承した郡―区(村落)関係を軸とした「地方的世界」が弱体化する面が見られる。しかし一方で、区(村落)では自立的開発事業の推進、また寺院などの文化的資源の整備などがなされ、引き続き「地方的世界」の基底的単位として機能していること、また郡役所によるオー・ボー・ト―監督の維持、郡中心地(町)の社会経済的センターとしての機能拡大により、郡社会は、タムボン・レベルの機能強化(タイの地方社会のグローバル化を牽引)を包摂して、今日でも基礎的「地方的世界」として健在であることがわかった。 (2)比較のため選定したミャンマー・シャン州タウンジー県(district)ホーポーン郡(township)は、シャン州の地方行政システムに組み込まれるとともに、少数民族であるパオ族の自治区(成立は2011年)の一部を構成することにより、特色ある「地方的世界」を構築しつつある。つまり、今日のシャン州の県・郡は英国による植民地化以前からあったシャン族的ムン(つまりムアン)を原型とする点で、タイ東北部の「地方的世界」の歴史的展開と類似するが、ホーポーン郡は、パオ族とシャン族の歴史的関係をふまえて、パオ族的なものを中心に据えた「地方的世界」の構築を志向している。 加えて、日本との比較も考慮するため、『東アジア「地方的世界」の社会学』(藤井ほか編、2013)で調査地とした兵庫県豊岡市の再調査等を行い、現代の「地方的世界」における歴史的なものの継承、またグローバル化の意味などを再検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度(2018年度)は、本務校での業務上の事情により海外調査の実施が十分にできず、研究が遅れたので、本年度はその分を挽回できるよう研究計画を立てたが、2019年4月に腰椎関係の疾病を発症し、症状も相対的に重かったため、3か月近く自宅で療養せざるを得なかった。その後回復したものの、海外での現地調査が可能になったのは10月になってからであった。大変に出遅れたが、10月以降は2回にわたって海外での現地調査(タイとミャンマー)を実施し、さらに学会等での研究発表も2回行うなどして、研究の進捗を相当に挽回することができた。しかしながら、2020年2月後半以降は新型コロナウィルス問題の発生によって、再び研究の推進を阻まれた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)研究の中心となるタイにおける調査研究はこの間かなり進んだが、補足調査が必要である。東北部と中部を同程度に調査するのは現実的ではないので、東北部を軸にして研究を深める。とくにタイにおけるオー・ボー・トー(タムボン自治体)の統合・再編の方向性が2020年には明確になるので、この動きが「地方的世界」の現代的な展開に与える影響を明らかにする。(2)東南アジア大陸部内での比較を行う必要があるので、他の社会の「地方的世界」の調査研究をさらに進めたい。本年度はシャン州の調査研究を実施することによって比較の手がかりを得たが、1度だけでは調査が十分な知見を得られないので、次年度も引き続き同じ地域で調査研究を実施する。当初はベトナムの調査も予定していたが、ミャンマーに絞って研究を深める。(3)東南アジア全体の展開も視野に入れるため、当初の計画では島嶼部の「地方的世界」の調査も予定しているので、これを実現する。(4)本研究を締めくくるものとして、この間の研究成果の公表のため、2~3か国の研究者を招聘して研究集会を開催する。 しかしながら、本年度の前半に病気により研究を実施できず、進捗がすこし遅れていること、さらに新型コロナウィルス問題により海外での現地調査の実施が当面は不可能な状態にあることなどを勘案すると、今後の状況にもよるが、上記の内容を次年度(最終年度)に全て行うことは厳しいと思われる。研究期間の延長の申請を行うことによって、研究を継続し、当初の研究の目的や目標を達成したい。
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Causes of Carryover |
前年度(2018年度)はすでに記した事情で研究が遅れたので、その分の経費を本年度(2019年度)に持ち越し、本年度の研究の中で使用する予定であった。しかしながら、本年度初めに腰椎関係の疾病を発症し、約半年間は海外での現地調査を実施することができなかった。その後調査研究全体をかなり挽回できたものの、十分には挽回できなかったため、一定の経費分が次年度に持ち越されることになった。また、ミャンマーの現地調査では共同研究者等から予想以上の協力や配慮を受けたため、当初予定していたより少ない経費で調査を実施できた。加えて、本年2月後半からの新型コロナウィルス問題によって、予定していた研究活動が滞り、その分の経費を次年度に持ち越すことになった。 これら次年度に持ち越して使用する経費については、調査研究の遅れている部分や、研究の一層の充実に使用することによって、本研究の目的や目標を達成したい。
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Research Products
(4 results)