2017 Fiscal Year Research-status Report
The Existence of Colonial Heritages and the historical memory in the Modern British West Indies
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17K02026
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
川分 圭子 京都府立大学, 文学部, 教授 (20259419)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 美知代 京都府立大学, 文学部, 教授 (50259420)
井野瀬 久美惠 甲南大学, 文学部, 教授 (70203271)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | イギリス近代史 / イギリス現代史 / カリブ / 西インド / 奴隷制 / プランテーション / 文化遺産 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度の大きな実績は3つある。1つは、2017年10月28日にキャンパス・プラザ京都にて、研究分担者山口美知代の協力のもとに、ロンドン大学名誉教授ジョン・ウェルズ氏とモンセラートからイギリスへの移民者であるガブリエル・パーソンズ氏を招いて、シンポジウム「カリブ地域研究への誘い―言語及び社会歴史的背景からのアプローチ」を開催し、ウェルズ氏講演「カリブ英語とその起源」およびパーソンズ氏のコメントを中心に討議を行ったことである。二つ目は、12月16日に埼玉大学にて、日本の近代大西洋地域の奴隷制研究者3名と研究会を開催し、報告を行ったことである。3つ目は、2018年3月14-25日の旧英領カリブ諸島での在外研究であり、研究分担者山口美知代と同行して行った。これにおいてはモンセラート、アンディグア、セント・キッツ、ネヴィスを訪問しフィールド調査、またトランジット地点のニューヨークでは文献調査を行った。フィールド調査では、モンセラートのセント・パトリック祭、火山噴火による旧首府を含む被災地域の調査、アンティグアの旧プランテーション・プランター邸宅調査、ネヴィス島の歴史遺産・自然遺産観光の現状調査(ヘリティージ・ヴィレッジ、レイン・フォレスト・ハイキングコース)を行った。いずれも現地の住民や観光案内人に聞き取り調査を行い、ビデオに収録した。 このほかに、社会経済史学会関西支部において、前回の科研の成果の一部である自著の内容と現在の科研の成果を合わせ、報告を行った。また論文集『商業と異文化の接触』を中心編者として編集し、吉田書店より出版した。また、カリブ地域の植民地を中心的対象とした近代西洋の貿易政策についての論文を著し、山川出版社「歴史の転換期」シリーズに寄稿している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現地調査の成果が、思いのほか大きかった。モンセラートではウェルズ氏、パーソンズ氏の休暇・帰郷と都合を合わせたため、彼らとその友人たちの案内を得ることができ、英語圏以外にはほとんど知られていない奴隷反乱・奴隷解放の歴史に起源をもつモンセラートのセント・パトリック祭や、1990年代のスフリール山噴火による被災・イギリスや諸外国からの支援などの状況について取材することができた。 ネヴィス島では前回科研の時に知り合った現地在住のアメリカ人ホテル経営者からの支援を受けて、歴史的遺産・遺物やそれにかかわる観光事業、保存活動などについて、有益な情報を得ることができ、詳しいガイドについて現地調査を行うことができた。 そのほか、アンディグアでは、偶然ではあるが国政選挙に遭遇し、現地人から選挙選の在り方や現在の政治と歴史的過去のかかわりなどについても、情報を得た。 以上の情報は、ビデオに収録しており、今年度はこれらのビデオをもとに、文献調査も併せて、日本では知られていない旧英領カリブ諸国の観光・文化遺産保護・政治社会の現状と歴史的過去の影響関係を、整理して、論文や報告書、講演会の形で報告していくことが可能である。現代のカリブ地域研究として成果が還元できるだけではなく、歴史研究にも以上のようなフィールド調査の成果が使用でき、これまでにない新しい歴史研究のスタイルを開拓する可能性も見えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、3月の在外研究のビデオを整理している。科研の研究目的にそって、カリブ地域の人々が奴隷制やモノカルチャアという負の過去が現在目に見える形で残しているプランテーション跡地や奴隷住居などをどのように意識しているのか、それを観光などに転用していくことをどう受け止めているのか、旧宗主国のイギリスにどのような支援を求めているのか、イギリス側の意識はどうなのかを分析し、テーマ別にわかりやすい形で複数のビデオ資料を編集する努力をしている。またとくにイギリス側の現代の視点を加えるために、今年度から研究分担者を1名追加し、討議を重ねていく計画である。これらのビデオを、大学の教材や講演会などにも使い、学生・一般人にカリブにおける過去の現存と歴史的記憶の醸成についても理解を広める準備を進めている。このために、現代のカリブ事情や英連邦、カリブ地域や世界の小島嶼、脱植民地化にかかわる国連の活動などについて、文献調査も進める。 現代についての情報だけでなく、18,19世紀にかかわる情報も在外研究により得られたので、現存するプランテーション・要塞・邸宅などの歴史的過去にかかわる文献調査も並行して進めていき、学術的な報告、論文作成も続けていく。昨年度に引き続き、日本の奴隷制研究者との協力体制の構築も続ける。
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Causes of Carryover |
研究分担者井野瀬久美恵が、2017年秋まで日本学術会議の副会長であり、その後も本務校内外での様々な公的役職を緊急に引き受けるなどして、在外研究に参加することができなかった。次年度使用額約45万円はほぼその旅費に相当する。今年度から、新たな研究分担者竹下幸男を迎えることにより、この次年度使用額の半分ほどを、30,31年度に分けて竹下に配当する。なお竹下は在外研究には参加しないので、これは海外旅費ではなく国内旅費および物品費として使用する。残り半分は、今年度思いのほか物品費(ほとんどが書籍代)がかかったことにかんがみて、30,31年度の物品費にあてる。
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Research Products
(4 results)