2017 Fiscal Year Research-status Report
自然環境破壊がもたらす民主主義:タイ東北部の「赤シャツ」運動とゴム栽培の因果関係
Project/Area Number |
17K02028
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
藤田 渡 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 准教授 (10411844)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | タイ / 政治生態学 / 民主化 / 農村 / 中進国 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度に実施した研究として、1)統計的データ分析による、「赤シャツ」(タクシン元首相を支持・軍政反対・民主化要求の運動)と生業・生活スタイルや生態環境との相関の洗い出し、2)定性的調査の候補地の概況把握、を行った。 1)に関しては、内務省村落開発局による村落データベースのデータを利用し、土地利用、世帯あたりの収入(農業・農外)、車・トラクター・情報通信機器の普及を郡ごとに集計した。一方、「赤シャツ」への傾斜度合いの指標として、2016年に行われた新憲法草案の国民投票の賛成票の割合を用いた。この憲法草案は、国会議員以外の首相への就任を許し、軍の政治関与の余地を残す非民主的な色彩が強いものであったため、「赤シャツ」支持の強い地域では反対票が多かったといわれている。村落データベースの生業・生活に関するデータと、この国民投票の賛成票との相関から、資本主義的な農業が浸透した郡ほど「赤シャツ」度が高く、反対に、森林が多く残る郡ほど「赤シャツ」度が低い、という結果が得られた。 この結果を受け、ウボンラチャタニ県内で、比較的早く商品作物栽培が普及し、赤シャツ度が高い地域、及び、遅くに普及し赤シャツ度が低い地域にて定性的調査を行い、比較することとした。このうち、前者に、短期間訪問し、人間関係作りと概況把握を行った。 これに加え、研究協力者のタイの研究者3名も、「赤シャツ」や「民主主義」についての語りの分析、地方の国会議員・地方議員のプロファイリング、タクシン政権期の政策と「赤シャツ」の関連性、の側面から研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
定量的分析の結果が出て、これについては論文にまとめる段階に入っている。また、2年目までに行う予定であった定性的調査に向けた準備を整えることができた。よって当初計画より早く進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ウボンラチャタニ県内で、比較的早く商品作物栽培が普及し、赤シャツ度が高い地域、及び、遅くに普及し赤シャツ度が低い地域にて定性的調査を行い、比較する。特に、住民の生活の変化がいつ訪れたのか、タクシン期の諸政策が彼らの生活にどのようなインパクトがあったのか、に焦点を当てる。
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Causes of Carryover |
研究協力者とのコミュニケーションのなかで、研究が想定より前倒しで進めることが可能であること、また、スケジュール上、そうする必要があることが判明した。この結果、研究協力者への謝金や、旅費などが当初予算より早く使用することが必要となった。研究計画全体をこれに沿って変更した結果、前倒し使用を行っても後年度に支障が出ないことがわかったため、前倒し使用を行った。
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