2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K02031
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
田川 玄 広島市立大学, 国際学部, 教授 (70364106)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 無形文化遺産 / エチオピア / オロモ / ガダ体系 / 文化政治 / 民族文化の表象 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、エチオピアの民族文化をユネスコの無形文化遺産として登録するプロセスを、グローバル・ナショナル・ローカルという三つのレベルのアクターの実践行為として捉える「文化の政治学」であり、エチオピアの最大民族オロモの年齢体系であるガダ体系を対象とする。本研究の申請時に登録には至っていなかったが、2016年12月にアジスアベバで開催されたユネスコの会議において、正式にガダ体系は「ガダ体系、オロモ固有の民主的社会政治体系」というタイトルでリストに登録された。 本年度は、エチオピアのオロミア州においてガダ体系の調査を行ったほかに、エチオピアの他の地域における文化遺産についても補助的な調査を行うことができた。 ガダ体系の調査では、オロミア州南部のボラナ県において地域社会ボラナが現在も8年ごとに行うガダ体系の最終階梯の終了儀礼を参与観察することができた。申請者は1995年に開催された同じ儀礼を参与観察しており、24年の時間経過による儀礼の変容を調査することができた。くわえて、オロミア州において政府機関や研究教育機関での聞き取り調査を行った。これらの参与観察および聞き取り調査のほかに、テレビのオロモ語放送を通してガダ体系が頻繁に言及されることやガダ体系の儀礼を連想させる流行歌など、オロミア州全体でガダ体系がオロモの伝統文化としての表象されていることを確認することができた。 また、エチオピア国内の文化遺産の比較のために、ボラナ社会に隣接するコンソ社会の文化的景観やエチオピア北部地域の文化遺産に対しても補助的な調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年に8年ごとのガダ体系の儀礼を参与観察し、社会状況の変化に伴う儀礼の変容を調査することができたのは大きな成果であった。しかし、オロミア州の一部地域において治安状況の悪化し、当初予定していた現地調査が困難になり、ガダ体系の再創造についてのデータを十分に得られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度、上記の事情により調査ができなかったガダ体系の関連イベントの開催やガダ体系の再創造について、関係者に対して聞き取り調査を行っていく予定である。ただし、現地の治安状況や新型コロナウィルス感染症の流行によって、調査が困難であると判断した場合は、文献調査やメール等での情報収集に切り替える。
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Causes of Carryover |
エチオピア連邦共和国オロミア州の一部地域で治安状況が悪化したことによって、当初、予定してた現地調査を行うことができなかったため。
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Research Products
(1 results)