2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K02031
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
田川 玄 広島市立大学, 国際学部, 教授 (70364106)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 無形文化遺産 / エチオピア / オロモ / ガダ体系 / 文化政治 / 民族文化の表象 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、エチオピアの民族文化をユネスコの無形文化遺産として登録するプロセスを、グローバル・ナショナル・ローカルという三つのレベルのアクターの実践行為として捉える「文化の政治学」であり、エチオピアの最大民族オロモの年齢体系であるガダ体系を対象とする。本研究の申請時に登録には至っていなかったが、2016年12月にアジスアベバで開催されたユネスコの会議において、正式にガダ体系は「ガダ体系、オロモ固有の民主的社会政治体系」というタイトルでリストに登録された。 2020年度は引き続き2019年度と同様にエチオピアにおける現地調査を予定していたが、新型コロナ感染症の世界的な流行などの諸事情により、断念せざるをえなかった。このため、これまでの現地調査のデータの検討、文化遺産をめぐる先行研究の再検討、インターネットを介した情報収集を行った。 ガダ体系は、当初は「ガダ」という多義的な現地語に「体系」をつけた学術用語であり、現地オロモ社会では知識人層に限定的に知られていただけであった。この用語の指す制度が多くのオロモの人びとに知られるようになった経緯として、州政府の主導する文化教育政策だけでなく、マスメディアやインターネットを介したポピュラーカルチャーの関与にも注目する必要があることが明らかになった。 特にオロモ語で発表されるポピュラーカルチャーのなかでも、ミュージックビデオを含むポピュラーソングは様々な形で政治的なメッセージを含みうるため、若い世代にオロモとしてのアイデンティティを喚起させる。例えば、南部地域出身のオロモ人歌手はミュージックビデオに南部の村落部を舞台にした儀礼をモチーフにしている。また、ポピュラーカルチャーと民族政治の結びつきは、2020年6月に有名なオロモ人歌手が殺害されたことから発生したオロモ人の若い世代を中心とした暴動からも理解できるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度に予定していたエチオピアにおける現地調査が、エチオピア北部地域での内戦をはじめとする政治状況が不安定となっただけでなく、新型コロナウィルス感染症の世界的な流行により実施することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、上記の事情により調査ができなかったガダ体系の関連イベントの開催やガダ体系の再創造について、関係者に対して聞き取り調査を行っていく予定である。ただし、引き続き現地の治安状況や新型コロナウィルス感染症の流行によって、調査が困難であると判断した場合は、文献調査やメール等での情報収集を進めたうえで、これまでの調査データの精査を行い、研究成果をまとめていく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の世界的な流行、北部地域の内戦や局所的な暴動の発生などを含む政情不安により、当初予定していたエチオピアの現地調査を行うことができなかった。また、現地調査を取りやめたため、予定していた現地調査のための機材を購入する必要がなくなった。
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