2017 Fiscal Year Research-status Report
An Assemblage and Study of Puyi-related Archives
Project/Area Number |
17K02036
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
ボルジギン 呼斯勒 昭和女子大学, 国際学部, 教授 (40600193)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 溥儀 / 満洲 / モンゴル / 東アジア / 中国 / 文書 / 民族 / 国際関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中国と台湾、ロシア、日本、モンゴルの諸文書館に所蔵されている、これまで利用されてこなかった溥儀関係の文書を収集し、「溥儀文書」を再構築し、溥儀の生涯と満洲国史、さらに北東アジア史をあらたに考察することを目的としている。2017年度は初年度として、史料の収集につとめた。日本における文献調査は、国会図書館などを中心に、溥儀や日本の満洲政策の関係資料を収集し、整理した。 海外調査では、中国第一歴史档案館や、台湾の国史館(総統府・副総統府資料)、中央研究院近代史研究所档案館を中心に、宣統年間の奏折や呈稿、郵電、租地租界、勘界、及び京師高等審判庁の資料などを閲覧し、「通電奉宣統諭任命各部与各省大臣官銜」など「張勲復辟」(1917年)と関わる資料、「蒙前清宣統帝義恤日災之大珍珠串等三十四件装木箱四個運往本国請転行免税由」など「小朝廷」(1912~24年)期の資料を収集した。ロシアの国立ロシア連邦文書館や社会政治史文書館、対外政策文書館などの文書館で溥儀の「シベリア抑留」時代(1945~50年)の資料を収集し、整理した。その内、ソ連内務人民委員部部長L. ベリヤが1945年8月22日にスターリンとモロトフに送った、溥儀とその親戚、日本軍の将校捕虜をソヴィエト軍チタ地区の施設に収容したことについての秘密報告や、溥儀がスターリンあるいはソ連政府に送ったソ連永住の嘆願書と声明文、及び溥儀と関係する写真などの資料は非常に重要である 成果物としては論文1本を公刊し、学会報告を1回おこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年までの関係諸国、諸地域で実施した予備調査では、溥儀と関係する史料の所在などをある程度確認できため、2017年度には、中国やロシア、モンゴル、台湾での調査を順調にすすめることができた。とりわけロシアでの調査では、予想をこえた重要な史料を発見し、収集することができた。また、日本、中国、ロシア、モンゴルなどの国の研究者と意見を交換することができた。さらに、論文2本を執筆し、1本を公刊し、1本は国際会議で報告することができたので、研究計画をほぼ予定通り実施することができた。同成果は「溥儀の財宝150点の写真」「最後の皇帝 悲哀の輝き」というタイトルの記事で、『読売新聞』(2018年3月20日)により報道された。 中国第一歴史档案館では「溥儀档案」という分類が設けられており、1912年から1931年までの溥儀の資料が所蔵されているが、2017年8月の同館での調査で、まだ公開されていないことが判明した。同時代の資料は、長春の溥儀研究院(2017年9月発足)や台北の故宮博物院などにも所蔵されており、今後、これらの文書館を中心に、同分野の資料の制約を突破し、研究を進展させたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、これまで得られた成果をいかし、中国や台湾、ロシア、日本、モンゴルの諸公文書館、図書館での調査を徹底し、本研究テーマに関わる研究基盤の強化につとめる。2018年度には、中国では、溥儀研究院や吉林省档案館を中心に、台湾では故宮博物院を中心に資料を収集し、溥儀の「天津時代」(1924~31年)や満洲国時代(1932~45年)の資料を収集する。ロシアでは、モスクワの諸文書館の資料をふまえたうえで、ブリヤート共和国とザバイカリエ地方、ハバロフスク地方で現地調査を実施し、シベリア抑留にかかわる溥儀の資料をさらに収集する。 また、これまで収集した資料を整理し、溥儀文書の目録を作成するほか、論文「転換期における溥儀――基本的史料にもとづいて」などを執筆する。ワークショップ「満洲とその周辺」を実施し、同分野の研究者と意見交換をおこない、これまでの研究成果を発表する。
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