2017 Fiscal Year Research-status Report
The study of local human resource management by Japanese firms in Taiwan
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17K02038
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
国府 俊一郎 大東文化大学, 経営学部, 准教授 (90759721)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 台湾労働市場 / 外食産業 / 労務管理 / 教育経済 / 限定正社員 / モチベーション / 従業員定着 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、本研究計画のうち理論的背景の確立に向けた研究を行った。数多くの研究発表と執筆および調査を行ったが、その中で主要な業績について報告する。 研究発表に関して、第一に平成29年5月27日に開催された日本台湾学会全国大会では、「台湾外食産業における大卒若年労働者の雇用と賃金に関する考察」というテーマで研究報告を行った。本研究の理論的バックグラウンドである労働経済学からの台湾労働市場への理解を試みた。第二には、平成29年6月10日に開催された労務理論学会全国大会では、「進学の経済合理性に関する批判的考察ー台湾女性の大学進学と就職先企業の分析からー」というテーマで、台湾における大卒者の特に外食産業に勤務することを志向する女性について、どのような学部に進学し、どのような企業に就職しているのかについて研究報告を行った。何れも筆者(研究代表者、國府)が主要に活躍する学会での報告であり、多くの反響が寄せられた。 論文執筆に関しては、二本が刊行され、一本が現在査読中である。平成30年3月に刊行された『経営論集』第35集においては「限定正社員をどうモチベートするか」というテーマで、外食産業における店舗の従業員をどのようにモチベートして行くかについて、実際の聞き取りと離職率などの数値を用いた考察を行った。 調査に関しては、平成30年3月7日から13日に台湾を訪問し、高雄市にある高雄応用科技大学、台中市の修平科技大学を訪問し、卒業生の就職先についてのヒアリングを行う、有意義なデータも収集した。また、平成30年1月に改正された台湾の労働基準法について、台北大学の専門家にヒアリングを行い、雇用をめぐる法律に関する最新の動向を把握した。その他、国家図書館で外食産業に関する期刊論文の収集を行った他、実際に日系のファミリーレストランを訪問し、労働環境を観察し、賃金などの労働条件などの情報を収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画について、おおむね順調に進展していると把握している。上記研究実績において述べたように、平成29年度には理論的背景の確立するための研究発表および執筆を多数行なったほか、今後の研究に関する打ち合わせも行った。 台湾で活躍する日系企業への聞き取りについて、台湾でビジネスを展開する日系のファミリーレストランチェーンのいくつかに調査の打診を行なったほか、台湾に赴いた際には、ファストフードチェーンの現地の管理職と打ち合わせを行い、労務管理の現在の状況についての聞き取りを行い、今後の研究協力について打診した。台湾における企業側の人事労務側への聞き取り調査は平成30年度に実施する予定であり、従業員へのアンケート調査を依頼する予定である。これについてはほぼ計画通りに進展しているといえる。 労働力の供給側である大学への聞き取り調査および統計データの収集については、予想以上に進展している。今回訪問した高雄応用科技大学からは近隣の大学で、外食関係の学科を持つ大学をいくつか紹介されたほか、台中の修平科技大学を訪問した折にも、近隣の大学を紹介してもらうことができた。これらのヒアリングで得た数値を用いて、平成30年度開催の日本台湾学会全国大会で報告する予定である。 しかしながら、働いている若者の実態の把握について、統計データによる数値については収集が完了し、分析も完了している。これを用いた学会発表も控えている。離職率に関するマクロ的かつ客観的なデータに収集について問題はない。しかしながら、肝心の外食で働く若者従業員の聞き取りが実行できておらず、やや遅れているといえる。こうした状況に陥った原因として、聞き取りを行うキーパーソンとして考えていた台湾時代の教え子がオーストラリアにワーキングホリデーで不在であり、その人物の同級生への聞き取りのアレンジも依頼することができなかったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究のアプローチの対象は、第一が台湾に進出する日系企業の人事労務の担当部署および管理者である。第二は労働者を社会に送り出す大学であり、学生の就職担当の教員および就職支援センターである。第三は外食産業で働く大卒の若者であり、台湾企業で働く者と日系企業で働く労働者の両方にアプローチする。 第一の台湾に進出する日系企業の人事労務の担当部署および管理者については、日本本社の役員と現在折衝中であるが、平成30年度の夏か遅くとも冬には接触する予定であり、ヒアリングを行う計画である。従業員へのアンケートについても必須事項である。外食産業との折衝が順調にいかなかった場合は、若干方向性が変わってしまうが、日系ファーストフードチェーンの担当者に協力を仰ぐ予定であり、現在話を進めているところである。 第二の台湾の大学の就職担当の教員および就職支援センターへのアプローチに関しては、順調に進んでおり、平成30年度はさらに拡大する計画になっている。筆者の過去の勤務先である新竹市の中華大学への聞き取りも行う予定であり、深堀した聞き取りを行うことが可能になることが予測される。 第三に台湾の外食産業で働く若者への実態把握については、マクロ的かつ客観的な統計データによる分析は完了しているものの、実際のヒアリングの実行が計画よりも遅れている。そのため、FacebookなどのSNSツールを用いて、今後広くヒアリングの対象を求めていく必要がある。理想としては、日系企業で働く若者労働者と台湾企業で働く若者労働者の両者にヒアリングを行って、両者間の差異について明らかにしていきたい。 加えて、台湾の労働基準法の再改正についても理解を深める必要がある。実際に外食産業の現場でも、今回の改正は大きな影響が懸念されている。日系企業でも対応を余儀無くされていると考えるが、必要とあれば有益なアドバイスを提供していきたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由について、当初は9月初めの台湾訪問調査を予定していたが、2018年9月9日に依頼された日本臨床政治家学会奈良大会における招待講演のために、十分な準備の時間が取れなくなったために、一回分の台湾訪問を3月にまわさざるを得なくなったためである。 その後2018年3月7日から13日までに台湾を調査訪問しており、当該次年度使用額については、実際に使用済みである。しかしながら、学内決算の関係上、次年度使用扱いということになってしまった。
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Research Products
(7 results)