2018 Fiscal Year Research-status Report
中華圏におけるナショナリズムとリベラリズム:連関する大陸中国・台湾・香港
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17K02040
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Research Institution | Tsuda University |
Principal Investigator |
中村 元哉 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (80454403)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 中華民国 / 中華人民共和国 / 香港 / 台湾 / リベラリズム / ナショナリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、香港、台北、広州、東京などでの史料調査と学術交流を介して、民国期の政治思想が人民共和国期にどのように継承され、変容されたのかを、これまでの自身の成果をふまえつつ、中華圏および東アジアの動態のなかで再把握することを試みた。まだ充分には解明できておらず、残された課題は三年目、四年目に取り組みたいが、確実に分かったことは、1950年代から1970年代の中華圏の政治思想は米ソの冷戦構造からだけでは決して読み取れない、ということである。つまり、20世紀前半の民国期の政治思想は、20世紀後半に中華圏が冷戦構造に覆われるなかでも、細々とであれ、途切れていなかった、ということである。大陸中国に即していえば、法学関連の学術誌は、文化大革命前後の時期を中心に、再分析する余地がある。 もちろん、1950年代から1970年代にも、この時期特有の論理とそれに基づく新たな政治思想の展開があったことも確かである。たとえば、1960年代後半の香港で発行された『盤古』は、冷戦構造や民国期からの連続性とは異質な政治・社会的背景のもとで、(一時的であれ)若者の間で人気を博し、一定の影響力をもった。そのなかでも特異な点は、当時の大陸中国で発生していた文化大革命に共鳴する若者が香港で出現し、それが反権力志向をもつ同時代のグローバル化された社会的動向と関連していたことである。この点については、当時を知る関係者への聞き取り調査からも明らかとなった(2018年前半に香港で実施)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
この2年間の成果を基盤にして、1970年代の中華圏の政治思想を体系的に整理する。
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Causes of Carryover |
国際会議での報告機会が次年度に持ち越されたため。次年度に、報告予定である。
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Research Products
(4 results)