2019 Fiscal Year Research-status Report
Jewish Refugees and Japan (1939-1946) : Australian Testimonies
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17K02041
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
菅野 賢治 東京理科大学, 理工学部教養, 教授 (70262061)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ユダヤ / 難民 / 敦賀 / 神戸 / 上海 / オーストラリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、1941 年、日本に到来、滞在した元ポーランド籍ユダヤ難民2名(オーストラリア在住、うち一人は2019年2月に逝去)による未公開の証言をもとに、太平洋戦争に突入する直前の日本が、ナチス・ドイツとその占領地から世界に溢れ出たユダヤ難民をいかにして受け入れることとなったか、また、その人々をいかに処遇したのかを再検証することにある。 当初の研究実施計画にもとづき、3年目に当たる令和元年度は(1)日本国内での聞き取り調査を、神戸市、敦賀市、福岡市で行い、(2)海外での調査を中国・上海市で行い、(3)研究代表者と国内外の研究協力者との打ち合わせ、意見・情報交換を、直接の面談とメールにより頻繁に行うことで、計画どおり、むしろ計画以上の成果を上げることができたと考える。(4)特設ホームページ上での研究成果随時発信について、活字によるものに限っては、当初の想定を上回る研究成果を公表することができたが(論文6本)、令和元年度末に完成させ、特設ホームページに掲載することになっていた中編のヴィデオは、令和2年2月~3月、新型コロナウィルスの感染拡大により、思うように編集作業を進めることができず、その完成は、令和2年度(現在の見通しでは5月か6月)にずれ込むこととなった。目下、研究協力者の映像作家、大澤未来氏が、みずからこの研究主題に深い関心をもって作業に当たってくださっているため、内容豊かにして、完成度の高い報告ヴィデオを、年度繰り越しで公表できる見通しである。 総じて、第二次大戦期、日本を経由したユダヤ難民をめぐって国内外で行われてきた研究の蓄積に新たに「オーストラリア編」を補填し、21 世紀の難民問題に対する日本のあるべきアプローチを思考するための基盤を築く、という研究目的は、最終年度となる来年度に向けて、着実に達成されつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記したとおり、本研究の令和元年度の進捗状況は、年度末の新型コロナウィルスの感染拡大という予想外の事態により、研究成果報告用ヴィデオの編集作業を年度内に終えることができなかったことだけを除き、おおむね順調に進展している。 2年目の平成30年度の末、本研究のインフォーマントのお一人であったマリア・カム氏が、オーストラリア、メルボルンにで、98歳で他界したが、その後、ご遺族との連絡を保ち、故人の遺品のなかから見つかった手記、写真、資料のたぐいを快く提供していただくことができたため、3年目の研究遂行にはほとんど支障はなかった。 研究開始時にはいまだ知遇を得ておらず、本研究の2年目から研究協力者として加わってくださった、オーストラリア、チャールズ・スタート大学講師、レイチェル・ウォルズ氏は、3年目の令和元年度も、非常に大きな貢献をもたらしてくれた(シドニー在住のもう一人のインフォーマント、マーセル・ウェイランド氏の自宅に赴き、肉声による朗読を録音する作業、また、故人マリア・カムに代わって、その手記を読み上げ、録音する作業など)。 他にも、3年目の令和元年度、本研究に大きな推進力をもたらしたのは、現在、特設ホームページに掲載されている12分の成果報告用短編ヴィデオを見たアメリカ在住のアーティスト、宮森敬子氏、ならびにドイツ在住の音楽家、ヘニング・シュミート氏が、本研究の歴史的意義を理解してくださって、目下、編集作業中の中編ヴィデオのため、美術と音楽の面から無償の協力を申し出てくださったことである。これら二名の芸術家たちの協力を得て、来年度完成予定の成果報告用ヴィデオは、単に研究者、歴史家のみならず、一般の視聴者にも強いインパクトを発揮するものになる、と期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の最終年度となる令和2年度に向けては、何よりも、編集作業が遅れている成果報告用ヴィデオを年度内の早期に完成させ、特設ホームページ上で公開することが最優先の作業となる。5月、6月までは、その作業に全力を傾注したい。 7月、8月以降の課題は、最終年度にふさわしい形で、活字による研究成果も、随時、特設ホームページ上で公開していく。本研究課題は、別途、受け入れ中の国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))課題番号18KK0031の主題と大きく重なる部分をもつが、研究成果として、きちんと切り分けるため、本研究課題の中心に据えられているオーストラリアの存在をクローズアップした成果報告にする方策を検討中である(たとえば、研究代表者が所属している日本オーストラリア学会に成果を報告するなど)。 上記2点がクリアできれば、最終年度の目的は十分に達せられると見込まれ、そのための阻害要因としては、目下のところ、新型コロナウィルスの感染長期化が懸念されるのみである。
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Causes of Carryover |
旅費の計算において、支出依頼書上と実際の支出額とのあいだに差額が生じてしまい、それを年度末に調整して使用することも困難だったため。差額は次年度の旅費として使用する計画である。
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