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2018 Fiscal Year Research-status Report

The ICTY and the aftermath in the post-genocidal community - Srebrenica

Research Project

Project/Area Number 17K02045
Research InstitutionRikkyo University

Principal Investigator

長 有紀枝  立教大学, 21世紀社会デザイン研究科, 教授 (10552432)

Project Period (FY) 2017-04-01 – 2020-03-31
Keywordsジェノサイド / 旧ユーゴスラヴィア国際刑事裁判所(ICTY) / 和解 / 記憶
Outline of Annual Research Achievements

3年計画の2年目にあたる平成30年度は、初年度の1)localに焦点を当てた研究を発展させつつ、2)regional/internationalな研究を行った。
1)初年度に続きボスニア・ヘルツェゴヴィナのスレブレニツァ、ブラトゥナッツ及びサラエボ、バニャルカの現地調査を実施した。8月下旬、初年度に聞き取り調査を実施したスレブレニツァの犠牲者遺族と遺体の二次埋設(遺棄)地近隣住民に対して、過去1年の環境の変化やICTY閉廷に関する意識等について聞き取りを行った。サラエボでは10年におよぶ調査の末、全4巻計4千5百頁超のボスニ紛争の全死者の名簿を作成した民間シンクタンク「リサーチ・アンド・ドキュメンテーション・センター」代表ミルサド・トカチャ氏に調査の経緯や手法、その後の余波などの聞き取りを行った。事実に即した犠牲者数の公表を通じて、全民族から歓迎はされずとも、中立的立場と認識され、融和に貢献している実態が明らかになった。
2)セルビア及びクロアチアにおいて、関係者の面談や聞き取り調査を行った。当初予定していた収監中のムラジッチ被告のインタビューは実現しなかったが、親族及び弁護団に対する聞き取りを実施、同被告側のICTYに対する認識を確認した。またICTY最初の起訴事件であり、戦争犯罪に関する重要判例として世界的に注目される「タジッチ事件」のタジッチ元被告本人との2日間約10時間の面談を実現した。冤罪を主張する同氏からは、事件の背景と主張の詳細、ICTYの判決が地域社会に与えた影響を観察する際の視点、刑期を終えた元被告らに関する重要な知見を得た。Internationalな視点については、スレブレニツァに関してまとめられた各国の報告書を中心に文献研究を実施した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究は、2017年に閉廷したICTYの24年の活動及びスレブレニツァ事件の判決が、事件の加害者・被害者双方にどのような意味をもったのか、またlocal/regional/internationalの3つのレベルの民族融和や和解、紛争の再発防止にいかなる影響を与えているのか、関係者の聞き取り調査などから明らかにし、今後のジェノサイドの予防・研究に資することを目的とするものである。
3年計画の初年(平成29年)度は“local”に焦点を当て、スレブレニツァ事件の主要な現場を、ほぼ時系列的に辿るとともに、犠牲者遺族や2次埋設地周辺の、自身も遺族・生存者である住民たちに集中した聞き取り調査を実施した。バニャルカ及び近郊においては、ボスニア紛争の激戦地や収容所が、第二次世界大戦の激戦地や虐殺地の跡地と重複していることを確認するとともに、スレブレニツァの加害者側の民族であるセルビア人にスレブレニツァやボスニア紛争がどのように記憶されているのかを調査した。オランダ・ハーグにおいて、ICTY最後の一審判決であるムラジッチ判決を傍聴した。また閉廷後の後継機関である国際残余メカニズム(MICT)の関係者に移行の詳細や現状について聞き取り調査を行った。
2年目にあたる平成30年度の計画はlocal及びregional/internationalに焦点をあてることであり、研究成果は上述のとおりである。クロアチアにおいては当初計画していたザグレブ大学やクロアチア赤十字関係者との面談は実現しなかったが、紛争中、民族の隔てなく支援活動を行った医師などにICTY閉廷やその判決に抱いている認識について聞き取り調査を行うことができた。
以上より、(2)の評価とした。

Strategy for Future Research Activity

本研究年度(平成30・2018年)、ボスニア・ヘルツェゴヴィナのスルプスカ共和国政府が、スレブレニツァ事件に関し、国外の委員9名からなる、国際専門家委員会「1992‐95年の間のすべての犠牲に関するスレブレニツァ独立国際調査委員会」を立ち上げ、研究代表者はその委員就任の依頼を受けることとなった。同政府によれば、この委員会の目的は「ボスニアの人々の信頼と寛容を醸成し、現在および次世代の和解と共生に資すること」で、委員会の活動期間は1年の予定である。
研究代表者は、ボスニア紛争当時、日本の国際協力NGOの駐在員として現地に駐在した経緯があり、また博士学位論文でスレブレニツァ事件を扱い(研究成果公開促進費の助成を受け、2009年に東信堂より「スレブレニツァ あるジェノサイドをめぐる考察」として出版)、近年は本研究課題により、再び現地での調査を繰り返してきた経緯からの要請であった。同委員会の設立については、「加害者側の政府が、政治的に決定したものであり、ボスニア紛争やスレブレニツァ事件におけるセルビア系の戦争犯罪行為を相対化する目的がある」といった指摘やスレブレニツァの犠牲者遺族から反発もあるものの、研究代表者は、本委員会への参加が本研究課題と、ボスニア・ヘルツェゴヴィナの和解や融和に一石を投じるものと確信し、またその一助となるべく、この委員会に参加しつつ、研究を行うものである。なお、本件にかかわる全委員の国籍は、イスラエル、イタリア、オーストラリア、セルビア、ドイツ、ナイジェリア、日本、米国であり、これらの研究者との交流は、本研究の重要な視角である"international"な視点からの重層的な考察に寄与するものと考える。

Causes of Carryover

サラエボにて聞き取りを計画していたスレブレニツァやボスニア紛争関係の資料館・博物館の館長と面会することができず、また、バニャルカで謝金が発生する予定でいた聞き取りに謝金が発生しなかったため。
次年度に移行した資金については、インタビュー調査謝金に使用する予定である。

  • Research Products

    (3 results)

All 2019 2018 Other

All Journal Article (1 results) (of which Open Access: 1 results) Book (1 results) Remarks (1 results)

  • [Journal Article] 「死者を記録する~ボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争の犠牲者をめぐって」2018

    • Author(s)
      長有紀枝
    • Journal Title

      立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科Social Designer

      Volume: Vol.30 Pages: 8-8

    • Open Access
  • [Book] 『ボスニア・ヘルツェゴヴィナを知るための60章』(「第13章ボスニア紛争における暴力-民族浄化とジェノサイド、性暴力」(82-86頁)、「第34章 戦争犯罪人を裁く-旧ユーゴスラヴィア国際刑事裁判所(ICTY)とボスニア」(194-198頁)、「コラム7:スレブレニツァ今昔」(199-201頁))2019

    • Author(s)
      柴宜弘ほか(長有紀枝)
    • Total Pages
      ー
    • Publisher
      明石書店
  • [Remarks] 人道問題の研究者が明け暮れに考えたこと - 長有紀枝の研究室から

    • URL

      https://osayukie.com/

URL: 

Published: 2019-12-27  

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