2017 Fiscal Year Research-status Report
中国・中国人認識に関する日本・韓国・台湾の比較研究:メディア・社会言説の分析
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17K02046
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
黄 盛彬 立教大学, 社会学部, 教授 (50308095)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ナショナリズム / 他者認識 / 中国 / 中国人 / 言説分析 / 質的メディア分析 / 東アジア / ナショナル・アイデンティティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本、韓国、台湾における中国・中国人認識の比較研究である。それぞれの国・地域における地政学的空間(世界)認識、他の周辺国への認識(イメージ・表象)との相関・影響関係、及びナショナル・アイデンティティの構築との関連で、中国認識の形成・変容、そしてその影響のあり方を解明することを目的としている。そのため、メディア・社会言説を分析し、またアンケート調査、質的インタビュー調査を通して、中国・中国人に関する認識の形成・浸透のメカニズムを明らかにし、共通点や差異を探る研究作業に取り組んでいる。初年度では、関連の先行研究の整理及び分析を行った。各種の世論調査結果などを収集し、時系列及び相関・影響関係を解明する作業を集中的に行った。また、新聞メディアを中心に「中国・中国人に関わる記事や論評を収集し、分析のためのデータセットを構築した。調査対象の国・地域が、共通に抱えている問題・懸案、そして主要な政治・社会的なイシュー、そしてメディアのイベントなどに注目し、データ収集及び分析を行った。具体的な事例研究としては、中国の習近平体制のガバナンスに関するメディア報道、中国人観光客に関するメディア言説、そして朝鮮半島情勢に関わる中国の役割といった具体的なテーマについての調査分析を行った。また、平昌オリンピック期間中のメディア報道にも注目し、その中での中国に関する言説を集めて、質的言説分析を行った。ソウル、台北の研究協力者と協力し、アンケート調査(ウェブで実施予定)及びインタビュー調査のための調査設計について協議を行い、調査設計を構築した。 以上の研究実績の重要性は、世論調査結果の分析を通してマクロなトレンドの分析に取り組んだことと、具体的な事例研究のためのデータセットを作成したことを挙げられる。分析を重ねることで、より総合的な説明が可能になると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究の整理及び分析については、調査対象の国・地域における学術論文データベースを利用し、関連の研究論文の収集を行ってきた。そのほか、各種メディア、世論調査機関、政府関連機関による中国・中国人認識に関わる調査の結果を体系的に収集した。これらの学術論文及び雑誌論文の分析を通して、学問共同体あるいは解釈共同体における中国・中国人言説の把握を試み、また各種世論調査の結果の分析からは、世論の時系列的かつ総合的な把握を試みてきた。 メディア・社会言説の分析については、これまで実施してきた 日本調査の枠組みを用いて、韓国と台湾の主要な日刊新聞における中国及び中国人に関する記事・論評を収集した。主要新聞の記事データベースからのキーワード検索を用いる分析データの収集を行い、質的分析のソフトウェア(NVivo)などを用いて、分析作業に取り組んだ。同時に、インターネット掲示板やブログなどにおける関連の主要イッシューについてのテーマに関する言説についても、同様に資料の収集を続けてきた。 アンケート及び質的インタビュー調査に関しては、パイロット調査の実施のために、韓国と台湾の研究者とのネットワーキングを試みてきた。ウェブアンケートの設問の作成作業に着手し、またプラットホームについても打ち合わせを行なった。また、質的な深層インタビューを実施するための被調査者の募集・選定作業を行なった。 以上のような作業は、当初の予定通りであり、分析の結果の解釈および成果の発表に関しては、当初の想定よりは時間がかかっているものの、資料収集および分析作業の流れは、概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、先行研究の整理および分析を継続する。あわせて、また、現地における専門家やメディア関係者などへのインタビューなどに積極的に実施し、より正確な実態把握に努める。世論調査データの総合的検討の結果を論文としてまとめる予定である。 調査対象の国・地域における中国・中国人関連のメディア報道および表象について、より詳細な分析(質的データ分析、言説分析など)を行う。具体的な分析資料の収集、分析方法などについては、これまでに行なった調査および研究発表後のフィードバックを参照しながら調整していく。今年度は、韓国と北朝鮮の首脳会談など、東アジア地域の国際情勢が大きく動くことが予想され、その中での中国の役割などについても、関心が高まることが予測されており、関連するメディア報道の収集・分析を集中的に行う予定である。 また、当初の予定通り、2年目からは、文学作品、映画、テレビドラマ、漫画・アニメといったポピュラーカルチャーに表れた中国・中国人認識に関する質的分析を実施し、より総合的なリアリティを明らかにしていく。 さらに初年度に引き続き、インターネットやソーシャルメディアにおける言説についての分析をすすめていく。初年度では、調査設計の構築に取り組んだが、2年目以降は、 深層インタビューのための実験グループを組織し、複数回における集中インタビューを実施する予定である。 以上の調査研究の成果を、学術論文(日本語、韓国語、英語)として公表し、最終年度には単行本としてまとめる。
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Causes of Carryover |
初年度では、主に関連の先行研究の整理及び分析と、メディアデータの収集に集中的に取り組んだ。そして、現地でのアンケート調査や質的な深層インタビューのための調査設計に着手し、実施は翌年度以降に行う予定である。当初の計画では、初年度にもパイロット調査を行うことを想定していたが、現地の研究協力者との協議の上で、初年度では調査設計に集中することとした。また、物品費に関しては、文献資料等については、研究テーマ一般的な資料に関しては、所属期間のリソースを利用することができたので、海外での現地調査の際に、希少資料などの確保のために次年度使用分として計上することとした。 次年度には、現地での調査が本格的に実施される予定であるため、旅費・人件費、調査費用などの確保が必要であり、次年度使用額として変更することが望ましいと判断した。
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Research Products
(7 results)