2017 Fiscal Year Research-status Report
The Possibilities of Plurilingualism for Ethnic Equality in Divided Societies: A Preliminary Study about Peace Building Initiatives from the Classroom in Myanmar
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17K02048
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
竹田 真紀子 愛知学院大学, 総合政策学部, 講師 (30521744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山旗 張星允 愛知学院大学, 総合政策学部, 教授 (50293717)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 民族平等 / 複言語主義 / ミャンマー / 分断社会 / 平和構築 / 多言語教育 / 社会的アイデンティティー / 社会的結束 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度当初は、モン州において複言語主義に基づく教育を導入し、民族平等と平和構築を促進する研究を遂行する予定であったが、ミャンマーの政治情勢が不安定で、特に民族地域での研究協力体制を構築するのに少し時間がかかると判断したため、対象地域を次年度に導入予定であったThanlyin townの尼僧院に変更した。この尼僧院の子供達は、シャン民族のサブグループであるパラウン族が多く、その他にナガ族、カレン族、ビルマ族の子供達が一緒に政府のカリキュラムに沿った教育を受けている。ここで今年度は、パラウン語の教育の導入を実施した。また、モン州においては平成30年度にプロジェクトを実行するための準備を行い、研究協力者とともに検討を重ねた結果、Mawlamyaineの仏僧院を対象校とすることになった。この学校は、モン族が約半数、残りがカレン族とビルマ族で構成されている。具体的には、それぞれの地域で以下の調査を実施した。 Thanlyin town:①研究協力者との打合せ ②研究支援者(民族語の先生)の面接、打合せと研究計画の説明(プロジェクトの意義、内容、収集データ等)③プロジェクト実行チームの編成 ④教材の決定とその他必要文具等の購入 ④教授法を含む協働教育ワークショップの開催 ⑤研究支援者と学生とともに協働教育の実施 ⑥ コミュニティ代表者との会議(課題や期待などの意見集約) Mawlamyaine:①大学関係者及び研究協力者との打合せ ②研究支援者との打合せ及び研究計画の説明 ③プロジェクト実行チームの編成 ④モン民族の地域政府の教育関係者と意見交換 現状では、Thanlyin townの尼僧院でパラウン語の教育を実施しているが、今後ナガ語の導入を実施していく予定である。また人権教育に関しては、今年度実施することができなかったので平成30年度に付加的なプログラムとして導入する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究が遅れていることには主に2つの理由がある。一つ目は、9月に予定していた現地調査を豚インフルエンザの発生と雨期の悪天候により断念せざるをえなかったことである。二つ目の理由としては、現地の政治不安にある。ラカイン州だけでなく、2016年8月に再燃したシャン州、カチン州における民族紛争とそれに対する民主政府の対応に対する批判的な意見など、現在情勢は安定していない。現民主政府に対する態度や立場も民族によって様々で、現地の研究者も目立った言動を控える傾向にある。よって当初は、もう少しオープンな形で研究を導入していく予定であったが、「平和構築のための多言語教育の導入」ができる学校を選ぶことにも慎重にならなければならなかった。以上の理由により、現地での具体的な打ち合わせ、研究協力スタッフの面接、ワークショップなどが開催できたのは2018年の2月になってからであった。そのためThanlyin townの尼僧院の小学校と中学校でのパラウン語の導入まではできたものの、尼僧院の中の少数派である言語の導入及びデータの収集までには至っていない状況である。また、モン州においては、予定していた地域を変更せざるを得ない状況で、現在はモン州の教育関係者及び研究協力者との打ち合わせを踏まえ仏僧院の関係者との打合せを終え、これから今年度に導入をする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、現地の情勢に応じて計画を変更せざるをえなかったため研究が予定より遅れている。今年度は、モン州の仏僧院(この学校は既にモン語の教育を実施して4年目である)において調査を実施する。また関係者や子供達にアンケート及びインタビュー調査を実施し多様性に対する意識についてデータを収集する。しかし、現在までに既に二つの課題を確認しており、この点について対応を検討する必要がある。一つ目は、民族語の教材についてである。複言語教育の目的は、民族の違う子供達が互いの言語を含む様々な言語を学ぶことによって多様性の理解を促進し寛容な態度を育成することである。しかし現在市販されている民族語の教材は、国語学習教材として開発されたもので他言語の学習者用ではない。よって尼僧院では、パラウン族の子供(母語で話すことはできるが読み書きができない)と他の民族の子供(完全な初級者)が混在することで学習がうまく進まない事があった。今後は、第二言語習得の為の教材を模索していくとともに先生に多様性のある学習者たちへの対応を促す必要がある。二つ目の課題は、協力支援者(民族語の先生やその他支援者)の意識である。ミャンマーでは、民族主義的な意識は根強く研究対象の両僧院でもその傾向がある。尼僧院では、先生が子供達に対して無意識に「こんなことで間違えていたらビルマ族に負けるぞ」という発言もあった。よって、この研究を推進するにあたっては、まず先生の意識改革が必要であると感じた。教授者や支援者が本当の意味で多様性の尊重について理解しない限り、この研究プロジェクトを成功させることは難しい。研究の導入自体が年度末になったため、課題への対応を検討できなかったが、子供に対してだけでなく、まず先生に民族平等や人権教育についてカリキュラムを作成し、教育を実施していく必要性がある。この件についても今後検討し、実施していく予定である。
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Causes of Carryover |
平成29年度は、2月に行った実地調査の旅費等、調査に関わる支出が平成30年度の処理となってしまったため、次年度使用額が生じた。しかしながら、実際にはおおむね計画通りに支出を行っている。
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Research Products
(8 results)