2017 Fiscal Year Research-status Report
インドネシアの中央・地方レベルにおける選挙政治の変容と「庶民派」リーダーの台頭
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17K02050
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
本名 純 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (10330010)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | インドネシア / 選挙 / リーダー / ポピュリズム / 政党 / 民主化 / 政治 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は本研究のスタートアップの年であり、地方自治体リーダーたちのプロファイル収集・分析作業、そして11月のジャカルタ現地調査に力点を置いた。現地調査では、ポピュリズム的な選挙キャンペーンが前年から流行るようになり、2018年の統一地方首長選挙でも一定の影響力を持つのではないかという政党リーダーたちの観測を確認できた。これは、インドネシアにおいても、右翼ポピュリスト的な選挙キャンペーンが、ある程度、効果を持つと思われていることの反映であり、いかにこの現象が、アメリカや欧州で見られる排外的ナショナリズムの運動と関連性があるのかという疑問を投げかけている。インドネシア、もしくはアジアにおけるポピュリズム政治は西欧のそれとどう同じでどう違うのか。この問いは重要であり、インドネシアの事例から、今後その答えが導き出せるのではないかと確信している。同時に、選挙の時期がくることで政軍関係にも大きな変化が見られることがわかった。これまで、政軍関係は、シビリアンの国軍管理能力ばかりに問題点が集中され議論されてきたが、実は選挙という民主制度がシビリアンのリーダーの政治的バーゲニングパワーを規定し、それが国軍との権力関係をも左右するという新しい視点も重要なのではないかと考えるようになった。これらの「発見」は、民主主義と選挙の関係を、より多角的に議論するベースとなっており、そのインプリケーションは、インドネシアの事例に留まらず、より広いアジアの比較研究の可能性を秘めているし、国際的な民主選挙支援に対する新たな政策アプローチも提案できるようになろう。こういう点も含めて、2017年度の研究業績として出版したり、講演会、研究会、学会などの場で発表してきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度の目的であった、①地方行政リーダーのデータ収集と、②ジャカルタ州知事選挙の調査と分析が実施できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は6月27日に実施予定の全国地方統一首長選挙にフォーカスをあてるのと、8月に決まる大統領選挙立候補者(選挙は2019年4月)をめぐる政党政治の分析をおこなう。すでに4月には民主主義者党の党首であるユドヨノ前大統領とのインタビューも予定されており、ここで得た知見を研究成果につなげていくために、6月選挙を注意深く観察し、政党エリートの戦略と選挙結果の関係を明らかにしたい。2018年度は日イ60周年記念で様々な催しがあり、インドネシアの民主主義の評価を幾つかの企画で報告するが、本科研の成果は、そういう社会発信としても貢献していきたい。
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Causes of Carryover |
2018年2月に予定していたインドネシアのユドヨノ前大統領(現民主主義者党党首)へのインタビューが2018年4月に延期したため、その予算を確保しておきたいという理由から、翌年度分として置いておいた。2018年度は、そのインタビューを実施した上で、さらに2回の現地調査を計画しているので、予算の使用についてはスムーズになろう。
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