2018 Fiscal Year Research-status Report
ウガンダ農村社会における在来知に配慮した「食育」の可能性
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17K02052
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Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
佐藤 靖明 大阪産業大学, デザイン工学部, 准教授 (30533616)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ウガンダ / 食育 / 在来知 / 食生活 / 食文化 / 農業 / バナナ |
Outline of Annual Research Achievements |
アフリカ農村社会の食に関する研究では、<栽培・採集>―<加工>―<消費>のしくみやその変容、外部社会との関係が議論されてきた。しかし、在来知を次世代に継承するしくみについてはまだよく分かってない。本研究は、ウガンダの農村において、食生活の現状と、世代間での食をめぐる知識の継承・教育がいかに行われているのかを(1)~(3)の方法によって明らかにし、在来知と科学知を組み合わせた「食育」の方法を新たに示すことを目的としている。(1)食生活:食事調査と食品サンプルの栄養分析を行い、科学的な観点から現状を把握する。(2)食料自給:各世帯に、食料の自給や商品化の傾向の変化とその背景を聞き取る。(3)在来知・科学知の伝達:農作業、調理、食事、学校生活の場面で、食にかかわる在来知と科学知がどのように知識が伝達されるのかを把握する。 平成30年度は主に、ウガンダにおいて現地調査を進めるとともに、日本にウガンダ人研究者を招へいして議論をおこなった。 現地調査では、南部の農村部にある小学校高学年(6、7年生)を対象にアンケート調査を実施し、一日の食事内容、嗜好性、学校と家庭で食に関して学んだことなどを質問した。また、持参してくる弁当の中身を調べた。さらに、家庭での食事風景の絵を描いてもらい、彼らが持っている食事のイメージを調べた。それと並行して、彼らが日常的に食している中心的な主食である料理用バナナのサンプルの日本へ持ち帰る手続きを進め、その栄養分析をおこなった。 ウガンダ人研究者の招聘に関して、現地カウンターパートであるマケレレ大学John Tabuti教授を日本での研究会議にお呼びし、食育に関わる議論をおこなった。Tabuti教授は森林等の自然資源の管理と利用を専門としており、住民との協働を通じた応用研究の経験が長い。彼のもつ知見をこの科研の調査を進める上での参考にすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
事業2年目である平成30年度は、現地調査、バナナの栄養分析用サンプル採取・分析、ウガンダ人研究者の招聘・議論を順調におこなうことができた。 調査国のウガンダでは、前年度に準備を進めていたサイトの一つであるウガンダ南部ラカイ県の農村の小学校において、校長をはじめ教師、児童の協力を得て、調査を無事に遂行し、オリジナルなデータを手に入れることができた。料理用バナナについては、ウガンダ科学技術庁からの許可と検疫の手続きを経て日本に持ち帰り、サンプルの栄養分析を専門業者に依頼し、品種ごとの主要栄養素を把握することができた。 ウガンダ人研究者の招聘については、日本熱帯生態学会年次大会(静岡)や、科研で実施した研究会にカウンターパートの研究者をお呼びし、講演や議論を通して、今後の研究の展開に関わる多くの知見を得ることができた。 人々の食に関わる在来知については、前年度に得たデータの一部を用いて複数の国際学会で発表をするなど、成果発表も進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度以降、以下のことをおこなう。 ・ウガンダ南部のサイトにおいて実施した小学校の児童を対象に実施した食生活のアンケート調査と昼食(弁当)の撮影調査のデータ、校長への聞き取り調査を分析し、その実態を把握する。 ・料理用バナナの栄養分析結果を参考に、フィールドの住民の栄養摂取状態を考察する。 ・異なる世帯へのインタビューを補強することで、食生活と農業の現状とともに、親世代から子世代への知識の継承についてのしくみに関する調査知見を深めていく。 ・現地の住民と、食に関わる家庭教育と学校教育のよりよい融合方法について議論する。 ・ウガンダの別の地域についても調査準備を進め、同様の手法を用いて調査を進めていく。
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Causes of Carryover |
現地調査を複数行う計画を立てていたが1回のみおこない、残りを次年度以降に実施することにし、次年度使用額が生じた。翌年度分として、主に文献費、調査渡航費にあてる。
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Research Products
(3 results)