2018 Fiscal Year Research-status Report
アラブ王制持続の総合的研究 ヨルダン・ハシミテ王国とその周辺空間を巡って
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17K02058
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Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
吉川 卓郎 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 准教授 (30399216)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 麻理絵 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 特別研究員 (80794544)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ヨルダン / 中東 / 国際政治学 / 比較政治学 / イスラーム / NGO / 安全保障 / 社会運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず本研究課題の30年度の論文等の実績について、研究代表者である吉川は、課題に直接関係する内容の査読付き学術論文を3本公表した。うち1本(日本語)は、ヨルダンの社会運動わけてもムスリム同胞団運動をはじめとするイスラーム運動の役割について、比較政治学と地域研究双方の立場から論じたものである。2本目(英語)は日本の対ヨルダンODAを「人間の安全保障」の立場から分析したもので、過去約20年間の同援助の内訳が、日本の外交方針の転換の結果、中東の地域安全保障に寄与し得る内容へとシフトしてきたことを明らかにしている。3本目(中国語)は、ヨルダンの軍事力を歴史ならびにレジーム・セキュリティの観点から論じた内容で、ハーシム家君主による軍指揮権の掌握ならびに軍事関連産業の振興が体制維持に貢献してきたことを明らかにした。研究分担者の佐藤は、ヨルダンを拠点とするイスラーム系NGOの難民支援活動に関する査読付き論文を1本公表した他、政治学分野を中心に新たな研究領域での論文執筆を進めている。また、佐藤が29年度に刊行した研究書は、30年度の「イスラーム文明研究ハダーリー賞」を受賞している。 30年度の研究発表については、吉川、佐藤および本科研費以外の研究者らから成るグループで、4年に1度開催される「世界中東学会(WOCMES)」(30年6月)でパネルを構成し、発表した。吉川の発表内容は日・ヨルダン国際関係ならびにODAに関するもので、佐藤はイスラーム系NGO・NPOがヨルダンにおけるシリア難民支援に果たした役割を包括的に論じた。それ以外に、吉川は、京都で行われた学術シンポジウムで、ヨルダンの王位継承問題を中心に論じた。佐藤も、東京にて、シリア難民を巡るヨルダン周辺の状況を含めた研究報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず全体の研究成果について、当初計画ではヨルダンの社会運動、安全保障、人口移動等につき分析を行う旨記載しているが、30年度は計画どおりに社会運動、安全保障、援助・開発に関する論文を公表している(内訳は、「研究実績の概要」に記載)。計画に記載した海外著名ジャーナルへの投稿先については、上記のうち1本をContemporary Review of the Middle Eastに掲載した。インパクトファクターという点では、当初掲載を目指していた最も著名なジャーナルであるMiddle Eastern Journal等よりやや劣るが、大手学術出版社が運営するオンラインジャーナルであることから、公開する意義は大きいと考える。さらに上記論文のうち1本は中国語ジャーナルに掲載されたところ、研究計画で掲げた国際的な研究発信という目的は、ほぼ達成できたと考える。また、「世界中東学会」での発表や国内での発表という点でも、研究代表者・分担者ともに予定通り実施できた。 以上の成果から、これまでの本研究課題の進捗状況は、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度は、本科研費計画の最終年度であるところ、遅滞なく計画を遂行できるよう努力を続ける所存である。まず論文等の執筆計画について、吉川は、これまでの本科研費の成果を単著として刊行する計画を進めており、現在のところ、令和元年秋に脱稿、翌2年春の刊行を目指している。佐藤も、引き続きフィールド調査の成果を論文として発信するよう努める。 研究発表について、令和元年度は最終年度であるため、可能な限り多くの国内外の学会やシンポジウムでの成果公表に努めたいと考える。具体的には、佐藤が日本中東学会での発表を行うほか(令和元年5月)、吉川がセルビアでの国際学会での発表を予定している(令和元年6月)。また年度の後半をにらみ、国際学会発表の申請準備を進めている。 現地調査については、吉川、佐藤ともに令和元年度夏季ないしは秋季を念頭にヨルダンでの調査を計画している。現在、調査地および調査対象のすり合わせを行っており、スケジュールがうまく調整できれば、共同調査・合同インタビュー等の可能性も模索している。
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Causes of Carryover |
分担者である佐藤の30年度活動において、前半は予定通り国際学会等への支出を行ったが、後半は論文執筆・投稿準備や国内での研究活動に専念したところ、当初予定より予算に余裕が生じた。その際、令和元年度の研究計画を再検討したところ、ヨルダンにおいて当初計画よりも包括的かつ長期間にわたるフィールドワーク(令和元年夏季)が必要であると判断したため、上記収支状況(差引額)記載の金額を令和元年度に繰り越して使用したいと判断した。
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Research Products
(8 results)