2017 Fiscal Year Research-status Report
Ethnic Problems and Limit of Democracy in India
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17K02063
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
近藤 則夫 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター南アジア研究グループ, 研究員 (90450452)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | パワーシェアリング / 多民族共存 / インド北東部 / アッサム |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は多民族共存の理論的検討、インド北東部の現状理解のために文献サーベイおよびアッサム州への現地調査を8月に行った。 理論的検討では、選挙民主主義体制下でも多数派民族の専制を回避し多民族が共存することは不可能ではないが、そこには一定の好ましい条件が存在することが確認された。一つの重要な条件は連邦制や民族間の適切なパワーシェアリングの取り決めである。それがあれば多民族国家でも選挙政治は必ずしも多数派民族の支配とはならない。また、歴史的経路依存条件として重要なのは深刻な暴力的紛争を経験しないことである。もし、そのような経験があると民族間の不信感は容易には解消できず、大規模な暴力を回避するためには国家の分裂も必要となる場合があると言える。 インド北東部の状況に関しては、同地域のインド国家への強引な取り込みが長引く紛争を引き起こしたことは間違いない。独立時のナガ系民族やその他民族の統合、1975年のシッキムの併合など基本的には強制によるものであった。特に前者は長期にわたる分離主義武装闘争を引き起こし、それに対してインド政府は武力で対応した。しかし、一方でインド政府は部族民多住地域で独特な文化を有する同地域の特殊性を特別な自治という形で尊重し、また経済的優遇策を強化することでインド連邦制内で問題を固定化することに一定程度成功したといえる。特にアッサム州などは、議会制民主主義の中で州内そして州と中央の間で利害関係が不断に調整されるメカニズムが定着し、また、経済的にも、政治的にも他地域との相互依存関係進展しインドからの分離は実際上考えられない状況となっていることが、現地調査などで確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1年目に多民族共存の可能性に関して基本的な理論的サーベイを行い、また、このプロジェクトの対象地域であるインド北東部のアッサム州への現地調査を行ったことは、大体予定通りであった。しかし、北東部は民族のモザイクであり、アッサム州のみへの現地調査だけではやはり不十分であり、可能であればあと1,2の州の現地調査を行うことが必要かもしれない。また、当初行う予定であったインド周辺部にあって国家統合の問題となる地域の長期的な人口動態の分析は行えなかった(主要データは準備した)。以上からみて「やや遅れている」と思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度には北東部の他の州、または北東部につらなる地域で紛争を経験した、あるいは、現在経験している西ベンガル州ダージリンやシッキム、あるいは、カシミール地域への現地調査を行い、これら地域の民族問題、特に対中央政府との関係を実態調査したい。ただし、インド側カシミールは現在も紛争が激しいため入域は場合によっては困難なことが予想されるが、その場合は文献研究などで補う。また、民族問題に揺れるインド周辺部地域の長期的な人口動態の基本的な分析を行う予定である。 2019年度はヒンドゥー民族主義が台頭するインドにあってもっとも圧迫を受けている少数派であるムスリムに焦点を当てる予定である。 以上のような調査活動に基づいてインド民主主義体制における民族問題を分析する。
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Causes of Carryover |
インドへの資料購入発注の一部が約7万円と残余額35404円を超えていたため、2017年度中に発注できなかった。次年2018年度にその資料購入発注で使用する予定。
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