2020 Fiscal Year Research-status Report
Ethnic Problems and Limit of Democracy in India
Project/Area Number |
17K02063
|
Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
近藤 則夫 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター南アジア研究グループ, 主任研究員 (90450452)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | インド / 民族問題 / 北東部 / 求心主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
主として文献に基づき理論志向の研究を行った。インド民主主義は、北東部に焦点をあてると、周辺部での民族問題では限界に突き当たっている。その中で本研究の大きな柱は、選挙と議会制の民主主義体制のプロセスでは問題の解決ができない現実を分析し、民主主義の限界を明らかにすることである。 北東部では国家統合と分離主義という多数派と少数派の間で相対するゼロサム的な問題状況が存在し、中央政府は問題解決のために独特の制度設計をし、政治的イニシアティヴをとってきた。それは成功、不成功、両面があるが、その成功、不成功を整理し評価することが北東部での中央政府主導のインド民主主義の限界を理解することにつながる。そのため中央政府が行ってきた様々な措置をより理論的に整理することが必要である。今年度はその理論的指針をえるために中央政府の様々な措置を比較政治学で用いられている「多極共存型民主主義」(Consociationalism)、あるいは、「求心主義」(Centripetalism)という視点から考察をおこなった。暫定的に言えることは、多極共存型民主主義という概念で中央政府が行ってきたことを理解することはあまり適切でなく、それに対して求心主義という概念での整理のほうが有効であるということである。 関連してインド北東部の民族問題を歴史的に分析したSanjib Baruahの『In the Name of the Nation ― India and Its Northeast』(Stanford University Press, 2020)の書評を行い、中央政府は北東部に憲法上の優遇措置となる特別な自治制度(憲法第6付則)、優遇的財政措置を与える一方、あくまでインド国家からの分離を求める勢力に対しては軍特別権限法という強権的措置を適用してインド国家への統合を強制してきた現状を確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
全体的に遅れが生じている。遅れの大きな理由は、既存の文献や統計データ、今までに収集した文献が膨大でその分析が遅れているからである。当初の予定ではインド民主主義の限界事例である、周辺部のジャンムー・カシミール、北東部、そして疎外されているムスリムという相互に関連する諸問題を包括的にカバーする分析を企図したが、始めてみると問題が複雑かつ大きすぎて扱うべき文献・情報も膨大で収拾が難しく、カバー範囲のスリム化をする必要が生じた。現在、焦点を北東部にして分析を進め、まとまりのある成果を出したいと考えている。 遅れのもう一つの理由はインドや南アジア諸国に行けない状況が続いていることである。2019年以降ジャンムー・カシミールへの現地調査は難しい状況で、さらに、2020年2月以降、新型コロナウイルスの感染拡大が生じ、2021年4月現在まで渡航が不可能な状況が続いている。従って、予定していた現地調査は行えず、現地情報の収集が困難であるからである。2020年度はグジャラート州への現地調査を計画していたがならなかった。現状では2021年度も渡航は難しいと予想される。
|
Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの感染拡大のため2021年度もインドや南アジア諸国に行けない状況が続くと予想され、予定していた現地調査に行けず、現地情報の収集が困難であると予想される。具体的にはグジャラート州への現地調査を昨年から計画していたが、2021年度も渡航は難しいと予想される。また2019年以降ジャンムー・カシミールへの現地調査も難しい状況である。従って研究にめどをつけるためには北東部に焦点をあて、インド民主主義の限界を分析することにしたい。既存の文献や統計データ、今までに収集した文献や現地でのインタビューなどに基づいて分析をおこなう。分析方針のポイントとしては、北東部の分離主義運動の実態で特に暴力の歴史的展開の状況を把握する。暴力の状況を明らかにすることが民主主義の限界をもっともよく示すことになるからである。そのうえで、同地域で近年中央政府と民族問題でどのような妥協・合意がなりたっているか、その実態を把握し、できるだけ理論的、一般的にまとめたい。
|
Causes of Carryover |
2020年2月以降、新型コロナウイルスの感染拡大が生じ、インドや南アジア諸国に行けない状況が続いているため。新型コロナウイルスが制御され、インドに現地調査可能であれば現地調査を行いたい。その場合はグジャラート州が対象地域である。 現地調査が引き続き不可能な場合は、文献購入、データマイニングのソフトウエアの購入、国内研究会出張で使用したい。
|