2022 Fiscal Year Annual Research Report
Ethnic Problems and Limit of Democracy in India
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17K02063
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
近藤 則夫 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター南アジア研究グループ, 主任研究員 (90450452)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | インド / 民族問題民族問題 / 北東部 / 分離主義 / 武装闘争 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、インド民主主義体制が民族問題など様々な問題に有効に対処できているのか,いないとすればインド型の民主主義体制の限界は何なのかを検証することである。インド民主主義の限界がもっとも鮮明に現れるのは、ジャンムー・カシミール地域や北東部地域など国家への統合が常に問題とされる周辺の地域である。当初、上述の2地域を対象とする予定であったが、ジャンムー・カシミール地域への現地調査の困難さ、問題の大きさから、北東部に焦点を絞って研究を継続した。最終年度については、主に以下の成果を現した。 1.日本南アジア学会大会(2022年9月25日)における発表:「北東部インドの連邦制と地方専制政治 ― 木村真希子氏の著作によせて」、2. 書評 木村真希子『終わりなき暴力とエスニック紛争:インド北東部の国内避難民』(『アジア経済』採択済み、掲載時期未定)、3.論文:「北東部インドにおける連邦制 ― 「うわべだけの連邦制とエスニックな地方専制政治」論を参照軸としての検証」(『アジア経済』投稿中)。 以上の研究活動を通じてインド中央政府が、独立以来、分離主義と武装闘争が常に問題となってきたこの地域を、如何にして国家のなかに統合してきたか明らかにした。制度面では、インド連邦制の中でも特別な措置をこの地域に適用し、この地域の分離主義に対応した。具体的には分離を許さない軍事、治安面での強権的措置、経済的に弱体な同地域にてこ入れし不満をなだめるための特別な優遇的財政措置などである。また中央と州あるいは州以下の地域など、各レベルの政党政治を通じて、不十分ながらも政治的連携を維持してきた。 北東部地域での分離主義活動(武装闘争)は2000年代に入って中央政府と停戦を結ぶなど穏健化の傾向にある。その背景には以上の様な諸要因があることは明らかである。
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