2017 Fiscal Year Research-status Report
南アフリカにおける移民・難民の脆弱性克服と社会的統合に関する研究
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17K02064
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
佐藤 千鶴子 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センターアフリカ研究グループ, 研究員 (40425012)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 移民 / 難民 / 南アフリカ / 社会的統合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、民主化後の南アフリカにおける移民・難民の脆弱性克服と社会的統合の課題を明らかにすることを目的としている。初年度となる平成29年度には、南アフリカ最大の産業都市ヨハネスブルク市のアフリカ系移民・難民集住地区(Y地区)において、アフリカ諸国出身者を対象に質問票を用いた聞き取り調査を開始した。具体的には、Y地区に事務所を構える2つのアフリカ系移民・難民団体の協力を得て、同団体とつながりを有するアフリカ系移民・難民40名(出身国はコンゴ民主共和国、ジンバブウェ、ブルンジ、コートジボワール、ナイジェリア、マラウィ、ルワンダ、ウガンダ、ガーナ)に対して、基本的な属性から移動の動機、ヨハネスブルクでの住居や仕事の内容、移民による相互扶助的な組織への参加の有無、出身国の家族との連絡状況などについて聞き取りを行った。 本研究では、南部アフリカ諸国出身者とそれ以外のアフリカ諸国出身者では受入れ国南アフリカで直面している課題が異なっており、それゆえ必要とされる社会的統合策の内容も異なるという仮説を立てている。平成29年度の聞き取り調査を通じて、国籍ごとに南アフリカで得られる法的地位が異なっていること、男性と女性では生活面で抱えている課題が違うこと、移民内部でのアソシエーション活動や相互扶助の度合いも出身コミュニティごとに異なっていることなど、興味深い発見があった。しかしながら、サンプル数がまだ少ないため、平成30年度にも引き続き聞き取り調査を行う予定である。初年度の成果としては、2つの移民・難民団体と協力・信頼関係を築くことができたことが大きい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、初年度となる平成29年度には、南部アフリカ諸国以外のアフリカ諸国出身者を対象に定量的な調査を実施する予定であった。ヨハネスブルク市のアフリカ系移民・難民集住地区(Y地区)において、2つの移民・難民団体の協力を得て、アフリカ諸国出身者を対象とする聞き取り調査が開始できたという点では、大きな成果があった。しかしながら、当初、想定していたソマリアとエチオピア/エリトリア出身者に関しては、2つの団体とのつながりが弱いこともあり、聞き取り調査ができなかった。ただし、代わりに、西アフリカ諸国や大湖地域の出身者に対して聞き取り調査を実施することができた。そのため、聞き取り対象者の出身国について当初の計画をやや変更し、新たな諸国を対象として加えた上で、出身国のバランスに配慮して、今後の聞き取り調査を進めていきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は、平成29~30年度には定量的調査、31~32年度には定性的調査という形で、調査方法を分けて聞き取り調査を行うことを計画していたが、実際に聞き取り調査を行ってみると、個人のライフヒストリーを踏まえることなく、南アフリカでの法的な地位や経済活動について理解することが困難であることが判明した。それゆえ、当初の研究計画を若干変更し、平成29~30年度にはライフヒストリーを含めた聞き取り調査をできるだけ多くのアフリカ系移民・難民に実施した上で、31~32年度にはその中からサンプルを選び、時間的な変化を追跡することで、彼ら/彼女らが抱える統合の課題を明らかにする方向で研究を遂行していくことにしたい。南アフリカでは法改正により、非正規移民や難民申請者に対する取り締まりが強化される方向にあるため、彼ら/彼女らがこういった法改正の影響をどのように受け、また克服しようとしているのかということを見るためにも、時間的な変化を追うことは重要である。 研究を遂行する上での物理的な課題としては、ヨハネスブルク市Y地区の治安の悪化が挙げられる。聞き取り調査自体は移民・難民団体の事務所で実施することが可能であるが、治安の問題で、移民・難民の居住環境について参与観察を実施することが困難となっており、今後、対応策について検討していく必要がある。
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Causes of Carryover |
平成29年度には、研究分担者を務める別の科研費と按分で現地調査を実施したため、現地調査のための旅費が当初の計画よりも安くすみ、次年度使用額が生じた。 平成30年度には、平成29年度の未使用額と合わせて、助成金の大部分を南アフリカでの現地調査費(調査補助員の謝金を含む)として使用することを計画している。
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Research Products
(6 results)