2019 Fiscal Year Research-status Report
南アフリカにおける移民・難民の脆弱性克服と社会的統合に関する研究
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17K02064
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
佐藤 千鶴子 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センターアフリカ研究グループ, 研究員 (40425012)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 南アフリカ / 移民 / 難民 / 生計活動 / コンゴ民主共和国 / マラウィ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、民主化後の南アフリカにおける移民・難民の脆弱性克服と社会的統合の課題を明らかにすることを目的としている。最初の2年間の研究を通じて4カ国出身者(コンゴ民主共和国、ジンバブウェ、ウガンダ、マラウィ)に焦点を当てることにしたが、2019年度には、(1)サンプル数が少なかったウガンダ及びマラウィを中心とする諸国出身の移民・難民20名に対する聞き取り調査、(2)コンゴ民主共和国出身者の生計活動に関する成果発表、(3)マラウィにおける予備的調査の3点を中心に研究を実施した。 このうち、マラウィにおける予備的調査では、マラウィ移民の同行を得て、移民の出身村にあたる北部農村を訪問し、移民を抱える世帯と元移民の総計25名に対して聞き取りを行った。調査項目は、南アフリカに暮らすマラウィ移民とマラウィに残る世帯との間の関係性、そしてマラウィから南アフリカへの移住の歴史的背景である。コンゴ民主共和国やウガンダ出身の難民・庇護申請者とは異なり、ジンバブウェやマラウィ出身の移民は、南アフリカを一時的な出稼ぎ先と見なす傾向が強い。しかしながら、マラウィはジンバブウェほど地理的な近接性がないため、出身国との行き来はそれほど頻繁ではない。他方で、マラウィ―南アフリカ間の移住は、ジンバブウェ―南アフリカ間よりもはるかに長い歴史を持ち、少なくとも3世代にわたり続いている。よって、今後は南アフリカへのマラウィ移民の移住のパターンに関して、世代間の変化を見ていくことが重要な課題であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年間の研究を通じて、南アフリカ共和国ヨハネスブルク市在住のアフリカ系移民・難民160名に対して聞き取り調査を実施し、そのうちサンプル数が比較的多かった南部アフリカのジンバブウェ、マラウィ出身者(51名)、そして大湖地域のコンゴ民主共和国、ウガンダ出身者(70名)という2つのグループを比較する、という研究の枠組みを確立した。また、両グループの大きな相違点として、(1)前者がおおむね移民であり、後者は難民・庇護申請者の場合が多いこと、(2)前者のグループは出身国との行き来が可能であり、南アフリカを一時的な出稼ぎ先と見なす傾向が強いため、出身国における調査の実施も重要であることが判明した。その結果、3年目にはマラウィで予備的な調査を実施することができた。ただし、マラウィ調査は短期間の実施となったため、聞き取りのサンプル数が少なく、4年目にも継続的に調査を実施していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に当たる2020年度は、(1)これまでのインタビュー調査で得た情報を分析し、南アフリカに暮らすアフリカ系移民・難民の社会資本の動態に関する出身国別の傾向を明らかにする、(2)マラウィにおける出身村と南アフリカ在住移民の関係性および南アフリカへの移住を巡る世代間の変化に関する現地調査の実施、(3)南アフリカにおいてこれまでの3年間に行った4カ国(コンゴ民主共和国、ジンバブウェ、ウガンダ、マラウィ)出身121名の聞き取り実施者の中からサンプルを選び、時間的な変化を追跡する、の3点を中心に研究を進めていく方針である。 研究をする上での物理的な課題としては、2020年3月頃から世界大に広がったコロナ禍のために、2020年度に南アフリカやマラウィにおいて現地調査を実施する見通しが立てられないことがある。さらに、本報告書を書いている4月半ば時点において、南アフリカは3月末から4月末までの1カ月余りの予定で行われる全国的な都市封鎖(ロックダウン)の状況にある。この期間、多くの移民・難民が仕事に行けない状態となっており、南アフリカ政府による失業補償や食料配給、社会手当の増額といった対応策も主に南アフリカ市民を対象にしていることから、移民・難民の脆弱性がますます高まる結果となっている。コロナ禍の身体的・経済的影響がどれほどのものとなるのか現時点では予想がつかないものの、研究の焦点を変える必要性がでてくる可能性があることを懸念している。
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Causes of Carryover |
2019年度の助成金は南アフリカ及びマラウィにおける現地調査の実施、そして国内学会での成果発表のための旅費、図書の購入などによりほぼ全額を使用した。しかしながら、それ以前からの未使用額があったため、次年度に繰り越す金額が生じた。 2020年度には、未使用額と併せて、助成金の大部分を南アフリカとマラウィにおける現地調査費(調査補助員の謝金を含む)として使用することを計画している。
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Research Products
(9 results)