2020 Fiscal Year Research-status Report
南アフリカにおける移民・難民の脆弱性克服と社会的統合に関する研究
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17K02064
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
佐藤 千鶴子 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センターアフリカ研究グループ, 研究員 (40425012)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 南アフリカ / 移民 / 難民 / 生計活動 / 社会的統合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、民主化後の南アフリカにおける移民・難民の脆弱性克服と社会的統合の課題を明らかにすることを目的としている。これまでの研究を通じて、ヨハネスブルク市において総計160名のアフリカ諸国出身移民・難民に対するインタビュー調査を実施し、生計活動や社会的紐帯のあり方について調査を行った。さらに、インタビュー実施者を、南部アフリカのジンバブウェ、マラウィ出身者、大湖地域のコンゴ民主共和国、ウガンダ出身者という2つのグループに分けた上で、両グループの南アフリカにおける位置づけと同国社会に統合される上で直面する課題について比較分析を行った。 両グループの相違点として、(1)前者(ジンバブウェ、マラウィ出身者)が概ね移民であり、後者(コンゴ民主共和国、ウガンダ出身者)は難民や庇護申請者の場合が多いこと、(2)前者の方が南アフリカへの移住の歴史が長いものの、必ずしも同国への定住を目的とする移民が多いわけではないこと、(3)その理由として、出身国との行き来が可能であり、かつ実際に出身国と南アフリカの間を比較的頻繁に移動しているとともに、送金を通じた出身国社会への投資が行われていること、(4)後者にはこのような活動がほぼ見られず、よって南アフリカ社会へ統合される必要性が高いこと、などが明らかになった。 2020年度は新型コロナウイルス感染症のパンデミック化により、南アフリカとマラウィで計画していた現地調査の実施が不可能となった。そのため、南アフリカ政府の新型コロナ対策や移民・難民に対する経済社会的支援策の有無について政策文書をもとに分析するとともに、公的な支援が及ばない非正規移民や庇護申請者の間での社会的ネットワークを通じた生存戦略について、これまでの調査を通じて得られた人脈をもとに、ヨハネスブルク在住のマラウィ、ジンバブウェ、コンゴ民主共和国出身者の状況に関してリモートで調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2017~2019年度まではおおむね順調に研究を実施できていた。しかしながら、2020年度は、新型コロナウイルス感染症のパンデミック化により、当初、南アフリカとマラウィで予定していた現地調査が全く実施できなかった。しかも、緊急事態宣言により、2020年4月~5月は職場閉鎖が実施されたため、職場に保存しているインタビュー調査の資料や図書すら閲覧できない日々が2か月ほど続いた。以降も先行きの見えない不安を抱えながら研究を実施しなければならなくなったことや、日本と南アフリカでは新型コロナウイルス感染症のピークがずれていることなどから南アフリカでの現地調査再開の目途が立たないことが、本研究計画の実施の遅れにつながった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度に計画していた南アフリカとマラウィでの現地調査が実施できなかったため、研究実施期間を1年延長した。2021年度に本研究課題の遂行がどこまで進むかは、新型コロナウイルス感染症を理由とする海外現地調査の実施に関する職場の制限がいつ緩和され、現地調査が実施できるか否かにかかっている。 職場による海外現地調査の制限が緩和された後には、当初、2020年度に計画していた(1)マラウィにおける出身村と南アフリカ在住移民の関係性および南アフリカへの移住をめぐる世代間の変化に関する現地調査の実施、(2)南アフリカにおいてこれまで実施した4カ国(コンゴ民主共和国、ジンバブウェ、ウガンダ、マラウィ)出身121名の聞き取り実施者に対して追跡調査を実施し、時間的な変化とコロナ禍への対応策について聞き取り調査を実施する。 他方で、海外現地調査を実施する見込みがたつまでの間は、ヨハネスブルク市在住のコンゴ民主共和国、ジンバブウェ、マラウィ出身者がコロナ禍での生活苦に対してどのように対応しているのか、長期化するコロナ禍と経済的停滞の中で、国際移動や出身国以外で生活することについて彼(女)らがどのように考えているのかについて、現地の調査助手の助けを借りつつ、リモートでのインタビュー調査の実施を計画している。加えて、送出し国であるジンバブウェ、マラウィにおけるコロナ対策やコロナ禍の影響についても、現地の委託先を探し、小規模な委託調査を実施することを考えている。
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Causes of Carryover |
2020年度には、新型コロナウイルス感染症のパンデミック化とそれに伴う職場による海外現地調査の制限のために、当初、予定していた南アフリカとマラウィでの現地調査が実施できなかった。そのため、多くの金額を次年度に繰り越さなければならなくなった。 2021年度には、南アフリカとマラウィにおける現地調査費(調査助手の謝金を含む)として使用することを計画しているが、もし、職場による海外現地調査の制限が継続した場合には、南アフリカとマラウィにおける調査助手を通じた委託調査の実施を計画する。
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