2021 Fiscal Year Research-status Report
南アフリカにおける移民・難民の脆弱性克服と社会的統合に関する研究
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17K02064
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
佐藤 千鶴子 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センターアフリカ研究グループ, 研究員 (40425012)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 南アフリカ / 移民 / 難民 / コロナ禍 / ゼノフォビア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、民主化後の南アフリカにおける移民・難民の脆弱性克服と社会的統合の課題を明らかにすることを目的としている。コロナ禍が始まる前の2018年~2019年にかけて、ヨハネスブルク市においてアフリカ諸国出身移民・難民160名に対するインタビュー調査を実施し、生計活動や社会的紐帯のあり方について調査した。その後、出身国(マラウィとウガンダ)での現地調査とヨハネスブルク市での追跡調査を予定していたが、それは2020年3月以降の新型コロナウイルス感染症のパンデミック化と渡航制限により実現不可能となった。そこで、2020年と2021年には、現地の調査補助員を通じて、少数のアフリカ諸国出身移民・難民を対象にオンラインで聞き取り調査を実施し、コロナ禍の影響について調査を進めてきた。 コロナ感染の拡大を防ぐために南アフリカ政府が導入した行動規制は、移民や難民の生計に重大な影響を及ぼしている。とくに2020年3月末~5月までのハード・ロックダウンの時期には、必要不可欠とされる職種を除く全労働者に自宅待機が命じられ、外出も厳しく制限された。南アフリカ政府は食料配給や失業者への給付金の新設などの社会経済的支援策を導入したが、これらを受けとることができた移民・難民は非常に限られていた。コロナ禍1年目の2020年には移民・難民を対象とする食料配給がNGOや市民団体により行われていたが、2021年にはこういった支援は著しく減少した。結果、ジンバブウェやマラウィなど近隣諸国出身の移民のみならず、コンゴ民主共和国出身の庇護申請者のなかにも、出身国への帰還を希望したり、選択したりする者が増えている。加えて、2022年に入り、南アフリカでは外国人を標的とする市民による抗議行動や暴力行為が増加しており、同国在住のアフリカ諸国出身者を取り巻く生活環境はさらに悪化している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
最大の理由は、2020年3月以降の新型コロナウイルス感染症のパンデミック化と渡航制限により、現地調査が実施できない状態が2年間、続いていることである。2020年度と2021年度には、現地の調査補助員を通じて、ヨハネスブルク市在住の少数のアフリカ諸国出身移民・難民を対象にオンラインで聞き取り調査を実施し、コロナ禍の影響について調査を進めてきたが、現地のネット環境や感染状況により、調査可能な時期や対象者が限定されるという問題がある。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度も計画していた現地調査が実施できずに終わったため、研究実施期間を1年間再延長した。2022年度に現地調査の実施が可能となった場合には、(1)2018年~2019年にヨハネスブルク市で実施したアフリカ諸国出身移民・難民160名に対する追跡調査を実施し、時間的な変化とコロナ禍への対応策について聞き取り調査を実施する。さらに、当初、2020年度に計画していた(2)マラウィにおける出身村と南アフリカ在住移民の関係性および南アフリカへの移住をめぐる世代間の変化に関する現地調査を実施する。 かりに2022年度も現地調査の実施が不可能となった場合には、上記の(1)の追跡調査を、日本からリモートで行う可能性を模索する。さらに、過去5年間の現地調査とオンライン調査で得られたデータをもとに、南アフリカにおいて移民・難民の社会的統合をめぐる現状や課題がコロナ禍によりどのように変化したのかについて成果をまとめる。
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Causes of Carryover |
2021年度も、新型コロナウイルス感染症のパンデミック化とそれに伴う職場による海外現地調査の制限のために、当初、予定していた南アフリカとマラウィでの現地調査が実施できなかった。そのため、多くの金額を次年度に繰り越さなければならなかった。 2022年度には、南アフリカとマラウィにおける現地調査費(調査助手の謝金を含む)として使用することを計画しているほか、2021年度にリモートで実施した聞き取り調査のテープ起こしと翻訳代にも充てる予定である。
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