2018 Fiscal Year Research-status Report
現代インドネシアにおける「移住・家事労働者」の変容
Project/Area Number |
17K02067
|
Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
平野 恵子 お茶の水女子大学, ジェンダー研究所, 特任リサーチフェロー (50615135)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 移住・家事労働者 / インドネシア / 海外雇用政策 / ギグ・エコノミー / 組織化 / 派遣・請負 / 技能化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目にあたる2018年度は、ギグ・エコノミーと再生産労働に関し国内学会および国際学会で報告するとともに2回の現地調査を実施した。また次年度成果本出版に向けて、3回の研究会をおこなった。 学会発表では、インドネシアの再生産労働分野におけるギグ・エコノミー形態の労働の拡大を2017年度~18年度にかけて実施した現地調査に基づいて報告した。従事者へのインタビューからは、従来有償家事労働に従事する層とは異なる学歴、職歴が明らかになる一方で、雇用主からの「疎外感」や「孤独感」といった就労上の経験は従来の有償家事労働職のそれと通底することが分かっている。 また、現地調査では、国内家事労働者組合員への聞き取り並びに移住労働者保護法施行以降の制度変化について送り出し地域での観察、関係者への聞き取りを実施した。国内家事労働者組合員に対しては、主として元移住家事労働経験者に焦点を絞り、帰還後の職業選択についてインタビュー調査を実施したところ、料理講習やテーブルマナー講習などを通じて家事労働者としての「技能」を高めることで職業としての家事労働を確立し「専門化」しようとする組合の意図とは裏腹に、帰還後家事労働職を選択した組合員には、「家事労働ではない何か」といった別の職業への志向性がみられる結果となり、家事労働職に対する社会的評価の低さを組合員が内面化していることが明らかとなった。 そのほか、2017年に改正された「移住労働者保護法」が送出し地域でどのように履行されているかを、国内有数の移住労働者送出し地域である西ジャワ州インドラマユ県を調査地に選定し、送出し管理センターの見学や、移住労働者組合ならびに人材派遣業者への聞き取りを実施した。次年度も同地での調査を継続する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね、申請時の計画に沿った調査研究を進めることが出来ている。 ギグ・エコノミー型の派遣家事労働者については、派遣企業への聞き取りが頓挫したものの、従事者には継続的にインタビューを実施しており、国内外の学会においてその成果を中間報告として発表することが出来た。また移住労働者については、新たな送出しシステム整備の進捗状況および政府による家事労働者「技能化」訓練を西ジャワ州インドラマユ県において観察している。加えて国内の家事労働者については、派遣型家事労働者への対応を国内家事労働者組合から聞き取っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
3年目にあたる2019年度は、引き続き現地調査を実施するとともに、本研究プロジェクトの成果を踏まえた単著刊行の準備を進めていく。 成果の一部を、国内学会のシンポジウムにおいて、また本年刊行予定の論文集において発表する予定である。
|
Research Products
(3 results)