2018 Fiscal Year Research-status Report
日本におけるセクシュアルマイノリティの出産・育児の実態把握に関する研究
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17K02082
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
新ヶ江 章友 大阪市立大学, 人権問題研究センター, 准教授 (70516682)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | LGBT / 出産 / 育児 / 生殖医療 / 生権力 / 代理母 / 養子縁組 / 里親 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、セクシュアルマイノリティで出産・子育てを考えたり実際に子育てをしたりしている自助グループでの参与観察を行い、調査上の問いを先鋭化させていった。参与観察を行った自助グループで出会った人々に対して、主に構造化されていないインフォーマルなインタビューを繰り返した。その中から、セクシュアルマイノリティが出産・子育てに至るプロセスとして、以下の6点を洗い出した:①子育てを考えている(あるいは実際に行っている)当事者自身のライフヒストリー、②子どもを持つ(持ちたい)動機、③当事者が理想とする「家族」の形、④精子・卵子提供者との出会い、⑤生殖方法の検討・実施、⑥出産後の子育ての実態。これらの結果からは、当事者自身と血縁家族との関係が自助グループへの参加に重要な影響を与えている可能性が示唆された。セクシュアルマイノリティであるために血縁家族からの理解や協力が得られない結果、自助グループによる共助関係や情報交換などが必要ではないかと考えられた。ただし、詳細についてはさらに聞き取り調査を行う必要がある。また、当事者が出産・子育てを行う際、どのような困難状況があるのかについてはこれまでの調査で一部明らかとはなったものの、その全体が未だ明らかとなっていない。社会的制度の整備という観点からも、来年度にさらなる調査を行いたい。フィールド調査と同時に、文献調査も行った。海外の同性婚や同性パートナーシップと出産・子育てに関する文献、生殖医療技術と生命倫理や医療人類学に関する文献の整理を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、主にレズビアン女性に対するインフォーマルなインタビューを行った。逆に、ゲイ男性へのインタビューが手薄になったため、来年度は問いをさらに明確にした上で、構造化されたインタビューを実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度のフィールドワークでは、主に出産・子育てを考えているセクシュアルマイノリティの置かれた社会的状況については明らかになったが、その一方で、彼ら/彼女らと医療者との関係、などはまだ明らかにできていない。また来年度の課題としては、日本におけるセクシュアルマイノリティの生殖補助医療の利用と法との関係、産科婦人科学会をはじめとする学会内でのセクシュアマイノリティの位置づけなどについても整理することが必要である。 さらに、実際にセクシュアルマイノリティによって育てられている子どもが本調査の中にきちんと位置付けられていなかった点は反省すべき点である。調査で出会った子どもたちが主に3歳以下であったためであるが、今後子どもを調査の中に位置付ける必要がある。
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Causes of Carryover |
今年度はインフォーマルなインタビューを中心に行ったため、フォーマルなインタビューで発生する謝金の支払いが小学であったため。
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Research Products
(4 results)