2019 Fiscal Year Research-status Report
昭和初期のラジオによる都市上層・新中間層の母親像形成に関する研究
Project/Area Number |
17K02099
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Research Institution | Musashino Junior College |
Principal Investigator |
野村 和 武蔵野短期大学, その他部局等, 教授 (70435238)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ラジオ番組 / 昭和初期 / 母親像形成 / 都市部上層・新中間層 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、昭和初期にラジオを通して都市部の上層・新中間層の中に形成された母親像とその過程でラジオが果たした役割を明らかにすることである。平成31年度の計画は収集したメディア資料とラジオ放送内容との比較分析を行い、ラジオ放送が形成した母親像や育児観を行うというものである。 当該年度の実績は、これまでのラジオ放送内容と当時の高等女学校の教科目や授業内容との関連性の検討成果に、雑誌記事で読み取れる当時の母親像、育児観との比較検討を加えて、ラジオが聴取者層に形成した母親像と育児観を考察した。乳幼児については、当時発達した医学や栄養学の知識が具体的に反映されている点や、衣食住について西洋文化の受容が積極的に行われている点、また「教育」への関心が非常に強い点などが指摘できた。 ラジオの「育児関連番組」での放送を、そのテキストから質的に分析すると、医学や栄養学などの専門用語が頻出しており、またテキストなどには、学術書に近い内容が含まれているいる。さらに、子供の教育についても「中学受験」への高い志向性を感じさせる内容が目立ち、当時の子供の受験に対して母親の役割が大きかったことなどが指摘できた。 そうした成果を踏まえて、当初の計画通り日本社会教育学会にて口頭発表を行った。しかし、計画していた武蔵野保育研究会での発表および発表要旨集への収録は、コロナウイルス感染症拡大の影響で叶わなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、最終年度に当たる当該年度では研究計画に沿って資料収集と分析を行い、研究計画通りに学会で報告を行うことができた。 しかし、報告の際に研究テーマの時代的背景の検討が不十分であることの指摘をうけて、その指摘は妥当だと感じた。昨年度より、都市上層・新中間層の女性たちの生活実態や子育てへの意識などを、より広くとらえて理解する視野が不十分であると記載をしていたが、そこが未達成であったと痛感し、1年間の助成事業延長を申請したものである。 ラジオ番組の質的分析に重点を置きすぎて、雑誌や新聞等の他メディアの分析が不十分であったことが要因だと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、不十分であった他メディアの資料から育児関連に関する検討を行うだけではなく、広く当時の女性たちの意識や時代的背景を考察していくことで、研究目的の達成精度をあげて、年度末に武蔵野保育研究会において、最終報告を行うこととする。
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Causes of Carryover |
旅費が発生する資料集の時期が計画通りにとれず、デジタルで資料閲覧が可能なものは、それに変えている。次年度は、資料収集のためにデジタル資料も活用しながら、可能な限り資料収集も行って、分析検討につなげたい。
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Research Products
(2 results)