2017 Fiscal Year Research-status Report
権利アプローチに基づく「性と生殖に関する健康」:アジアでの実践の適用可能性の検討
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17K02101
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Research Institution | Kyoto Human Rights Research Institute |
Principal Investigator |
三輪 敦子 公益財団法人世界人権問題研究センター, その他部局等, 嘱託研究員 (90414119)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 権利アプローチ / ジェンダー / 性と生殖に関する健康 / アジア / エンパワメント |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、研究開始年度としてまず、連携研究者を交え、研究計画全体を確認すると同時に研究実施体制を検討し、各自の担当部分について再確認した。 二分野から構成される研究計画の一つ目である「ジェンダー視点に立った権利アプローチに基づく『性と生殖に関する健康』の実践例に関するアジアにおける実証的調査を通じた実践枠組の検討」については、8月にカンボジアを訪問した連携研究者が、権利アプローチに基づいたHIV/エイズ予防研修として世界各国で実施されている「ステッピング・ストーンズ」研修について、カンボジアにおける実践の現状や課題についての予備調査をおこない、平成30年度の海外調査に向けた知見を得ると同時に研究者、NGOに調査への協力を依頼することができた。 また、二つ目の分野である「日本における権利アプローチの適用可能性の分析と検討」については、権利アプローチの理論的検討を目的とする読書会、権利アプローチに基づいてHIV/エイズ予防プログラムを実施しているNGOへの聞き取りをおこなった。加えて、日本における権利アプローチの実践例についても、国連女性差別撤廃委員会の支援を得つつ雇用裁判を闘った女性からの聞き取りに向けた準備をおこなうことができた。 加えて、権利アプローチに基づく「性と生殖に関する健康」や周辺概念である「人間の安全保障」に関する学術的研究および国際機関やNGOの文献を収集・分析した。特にアジアやアフリカ等、西欧以外の地域における人権概念の浸透、権利アプローチに基づくジェンダー視点に立った実践に関する文献資料を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者、連携研究者による研究体制と担当分野を再確認すると同時に、アジアでの実践例についてのカンボジアにおける予備調査や関連文献の収集と分析・検討をおこなうなど、平成29年度に予定されている研究については、おおむね滞りなく実施してきたと考えている。ただ、インドにおける調査の準備については、昨年は協力を依頼しているNGOが大規模な周年事業を実施した関係もあって、予定通りには準備を進めることができなかった。 平成30年度は、平成29年度に実施することができなかった課題に取り組むとともに、当該年度に予定されていた研究計画の実施に努める。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の前半は、研究(Ⅰ)「ジェンダー視点に立った権利アプローチに基づく『性と生殖に関する健康』の実践例に関するアジアにおける実証的調査を通じた実践枠組の検討」に関しては、2016年におこなったインドにおける調査結果をさらに分析・検討することと並行して、その成果を平成30年度に実施するカンボジアにおける調査に発展的に反映させ、カンボジア現地調査の方法、調査対象者、情報収集項目の選定と質問票作成を含む調査計画を確定し、実施に向けた準備を進める。 研究(Ⅱ)「日本における権利アプローチの適用可能性の分析と検討」については、引き続き、関連文献の収集と検討をおこなうと同時に、人権研修等、日本における権利アプローチの実践例の分析を通じ、日本における権利アプローチ実践の阻害要因を検討する。また、国連女性差別撤廃委員会の支援を得つつ雇用裁判を闘った女性から、権利意識を獲得したプロセスについて聞き取りをおこなう。 また、年度後半にかけては、研究(Ⅰ)および研究(Ⅱ)の成果を踏まえ、権利アプローチに基づくジェンダー視点に立った「性と生殖に関する健康」のための教育・研修教材の作成に向けた検討をおこなう。パイロット教材の作成に取り組み、授業や市民向けのセミナーでの実践を検討する。実践を通じた知見を教材の開発にフィードバックし、有効な実践方法と枠組についての精緻化を図る他、ジェンダー視点に立った権利アプローチの実践が効果を上げるための条件とプロセスに関する理念的概念的枠組の構築に取り組む。
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