2018 Fiscal Year Research-status Report
権利アプローチに基づく「性と生殖に関する健康」:アジアでの実践の適用可能性の検討
Project/Area Number |
17K02101
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Research Institution | Kyoto Human Rights Research Institute |
Principal Investigator |
三輪 敦子 公益財団法人世界人権問題研究センター, その他部局等, 嘱託研究員 (90414119)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ジェンダー / 開発 / 権利アプローチ / エンパワメント / 性と生殖に関する健康と権利 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、個人の福祉(well-being)とエンパワメントにとって重要な構成要素である「性と生殖に関する健康)」の実現に向けて、ジェンダー 視点に基づいた権利アプローチのアジアにおける実践が、現実的また戦略的にどのような成果を生み出せるかを検証し、権利アプローチが「性と生殖に関する健康」に関連するジェンダー課題の解決に貢献するための実践的枠組の検討と構築をおこなうことである。 そのことを通じ、平等な関係性に基づいた「性と生殖に関する健康」の実現に向けた国内外の実践に対し学術的に重要な知見を提供する他、特に、望まない妊娠、(デート)DV、HIV 感染等、日本における関連する諸課題の解決に対し具体的かつ実質的に貢献する。 2018年度は、文献調査に引き続き取り組むと同時に、マスム、ステッピングストーンズ以外の、権利アプローチに基づいて「性と生殖に関する健康」の実現に取り組んでいるアジアの団体との関係構築を模索した。これについては、カナダにおけるW7(Women 7)サミットへの出席、また同会議の「性と生殖に関する健康と権利」分科会への参加と提言作成プロセスに関わったことにより、「性と生殖に関する健康と権利」に関する世界の動向に触れる機会があったことは重要な成果であった。議論から得られた知見や会議を通じて構築したネットワークを、今後、これまでに現地調査を含めて情報を収集してきたマスム、ステッピングストーンズ以外の団体との関係を構築することにつなげることにより、より多角的な分析と検討をおこなっていく。 また、2018年度の後半にかけては、セクハラ事件への政府やメディアの対応、父による娘へのレイプに対する無罪判決等、2018年に発生した女性の「性と生殖に関する健康と権利」をそこなう様々な事件について、権利アプローチの視点から報告や勉強会でのコメントをおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度におこなう予定であったインドにおける調査結果のさらなる分析・検討と、カンボジアにおける調査への発展的な反映については、協力を依頼しているNGOの組織改編等の理由により、2019年度に繰り越しての実施となるが、その他については、おおむね順調に進展している。 また、当初の予定にはなかったものの、2018年4月にカナダで開催されたW7(Women 7)サミットへの出席および「性と生殖に関する健康と権利」分科会への参加によって、「性と生殖に関する健康」の実現に向けた世界の課題と地域における実践に関する知見を得られたことは、本研究にとって大きな成果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の前半は、2018年度に十分に進めることができなかったインドにおける調査結果のさらなる分析・検討と、カンボジアにおける調査への発展的な反映に、引き続き取り組むとともに、インドおよびカンボジアにおける現地調査を実施し、これまでの調査結果を踏まえ、さらに検討が必要な課題について調査と分析をおこなう。また、本研究の成果の一環として、ジェンダー視点に立った権利アプローチに基づく「性と生殖に関する健康」の推進に関する意義と成果を広く発信するために、インドおよびカンボジアから、研究者あるいは調査協力NGOのスタッフを日本に招いて国際セミナーを開催し、日本における関連する諸課題の効果的な解決に貢献する。 年度後半は、それまでの研究成果を踏まえ、支配性・従属性を内包した関係の変革を通じた、ジェンダー視点に立った「性と生殖に関する健康」の実現に貢献する実践的枠組の構築に向け分析と検討を続ける。 それらを通じ、権利アプローチに基づくジェンダー視点に立った「性と生殖に関する健康」のための教育・研修教材を作成し、授業や市民向けのセミナー等で実践する。
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