2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K02107
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
寺岡 伸悟 奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (90261239)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻井 清一 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 教授 (60334174)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 異業種連携 / 観光 / ソーシャルビジネス |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度の、農商工連携採択事業(とくに事業構成のなかに観光が含まれている事例)の訪問調査(聞き取り、観察)と資料収集により、農業体験などの観光的要素を含み、かつ観光事業者が中心にいない連携事業は、事業の持続の面において困難に直面し、一部には頓挫したケースが多いことが明らかになった。またその理由については、(1)持続的農村地域発展の契機としたいホスト側と一時的な娯楽としか認識しないゲスト側の価値観の相違(2)ゲストの移送や食事の提供、漁船を観光業に使用することなどに関する許認可の事情が、事業計画の段階でホスト側に十分認識されていないこと、(3)体験事業中の事故などにかんする保障など、旅行業の専門家ではないために知識やノウハウが欠如していること、(4)異業種が複数関わることによって成立する連携であるため、それを進めている間に、どのセクターかに状況の変化が生じる可能性があり、その場合に、そうした変化に適切に対応して新しいルールなどをつくり連携を維持するようなシステム統合の力がなく、事業が中断してしまうことも見られた。 こうした事柄と関わってもう一つ明らかになった重要な点は、事業申請の時点で支援は比較的充実している(例:アドバイザーの紹介など)に比して、事業開始後の持続のための支援体制が弱く、また事業は各地域で新たな連携や支援を必要としつつ進められるため、むしろ地元自治体や商工会などが、連携事業について十分な知識提供を受けていることが必要であるが、そうした仕組みが形成されていないなど多くのことが明らかになった。 これらの成果の一部を整理し、2018年8月、インドネシアで行われたアジア農村社会学会でポスター報告を行なった。 一方、2018年度後半には、うまく事業が持続・発展している事例も見つかり、持続の条件や課題がより明らかになってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定どおり、研究の中途成果を国際学会で報告することができた。またこれをそれ以後の調査とディスカッションなどによって補強し、国際学会誌への投稿にむけて作業を進めており、草稿はできあがっている。 また、良好事例の発見によって、考察の内容は進展しており、2019年度の計画がより具体化されたと考えられる。 ただ、予定より少し事例調査の数が少なく、とくに年度後半は、訪問希望先との予定調整がうまくすすまず次年度に繰り越された。こうした点が、少し進捗の遅れと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
優良事例、また初年度に訪問調査し、非常に重要な事例とみなしたある事例が、他地域に水平展開された(2018年)ため、この事業拡張についても、訪問しインタビューと観察、さらに比較調査を実施していきたい。 また必要におうじて小規模なアンケート調査の実施を検討している。 さらに、2018年度に国際学会で報告したものを論文として投稿する予定である。 また、それに含まれなかった知見やそれ以後のあらたな知見・分析を2名の研究者で議論を重ね、いまいちど国際学会での報告を目指したい。
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Causes of Carryover |
事例訪問調査が双方の日程調整の関係で予定より訪問数が下回ったこと、および比較的近距離の調査先が先に訪問できたことによってこうした状況が生じた。次年度は、今年度いかれなかった遠方の訪問調査を実施する予定である。
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