2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K02115
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
福井 令恵 法政大学, キャリアデザイン学部, 准教授 (50724035)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 住民集団間関係 / 移行期社会 / 都市論 / 表象 / 紛争跡地ツアー |
Outline of Annual Research Achievements |
本プロジェクト1年目に当たる平成29年度は、以下の4点を実施した。 1.観光・移動・都市空間内の表象に関する現在の最新の理論的動向を押さえるために必要な文献を収集し、検討した。 2.北アイルランドのベルファストおよびデリーへ赴き、観光の展開について現状の把握に努めた。特に北アイルランド社会における紛争経験の提示の仕方について考察する際重要な複数のミュージアム(The Museum of Free Derry、Tower Museum、アルスターミュージアムの紛争写真展――Conflicting Images Photography from the Northern Irish Troubles、Crumlin Road Gaol)を訪問し、それぞれの展示方法や館内ツアーなどの特色や運営について調査した。また近年ベルファスト市が主要な観光施設として位置づけるTitanic Belfast およびSS NOMADICを訪問した。 3.ベルファスト、デリーのそれぞれの観光センターで資料収集を行い、市の観光の全体的な把握に努めた。またコミュニティ(特に紛争を経験し複合的な社会問題を抱える地域)の観光に関する様々な意見や動向を知るために、コミュニティセンターを訪問した。東ベルファストのコミュニティーセンターでは、コミュニティの観光および地域の歴史の展示に関わる担当者にインタビューを実施し、地域で行われている活動についての情報を得た。 4.ベルファストとデリーの2都市におけるモニュメントおよび壁画の現状と変化について、調査を実施した。これまで経年調査をしていた地域の他、当初予定していた地域を超える広範囲(デリー――The Fountain, Bogside,Bishop Street――および東ベルファスト)で実施することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は「調査開始期」として位置づけており、導入的な現地調査と理論的仮説の探索・精緻化を目的としていた。現地調査では、以前の調査で知り合いになった人の取り計らいで、当初予期していなかった、東ベルファストのコミュニティセンターの活動および地域コミュニティの動向について、担当者にインタビューをすることができた。しかしそのため、29年度予定していた観光に関する北アイルランド政府・行政の資料の収集・分析については実施できなかった。行政資料の収集・分析については、来年度以降に行う予定である。さらに、これまで十分にカバーできなかったデリーの全体的な壁画の調査およびベルファストの壁画の経年調査を実施することができた。また仮説の探索・精緻化については、基礎的な理論の整理を行った他、現地で得た情報から仮説の検討をしている最中である。以上の点からおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、理論的仮説の探索・精緻化を継続して行いつつ、観光に関する北アイルランド政府・行政の資料を収集・分析する予定である。現地調査では、地域コミュニティの関係者、観光商品の作り手である壁画の関係者から話を聞き、政府や行政の政策と現地での動きの関係性を考察する予定である。また研究会等でその成果を発表する。
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Causes of Carryover |
配分された研究費を効率的に活用したためごく少額の余剰金が発生した。余剰金は次年度の旅費の一部に充当する予定である。
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