2018 Fiscal Year Research-status Report
マレーシアにおけるエスニックな観光土産をめぐる複合的な社会関係に関する研究
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17K02117
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
市川 哲 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 准教授 (40435540)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 観光 / エスニック・ツーリズム / 観光土産 / 手工芸品 / 先住民 / 移民 / 東南アジア / マレーシア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はマレーシアにおける東南アジアにおけるエスニックな文化や生活を観光資源とした、いわゆる「エスニック・ツーリズム」に注目し、その動態的な性格を、観光という脈絡でのみならず、観光と直接関係ない日常生活の中に位置づけて把握することを目的とする。 そのために本研究では当該地域におけるエスニック・グループの生活文化や日常的な生活用品、祖先から受け継いだ様々な物質文化や儀礼、慣習、生業、宗教活動、芸術活動、コミュニティ等の様々な存在が、外部社会から訪問する観光客に対していかにして観光資源となるかという現象を対象とした、文化人類学的・観光人類学的なフィールドワークを行った。それにより、少数民族が農耕や出稼ぎといった生業に従事する一方で、外部社会から到来する観光客向けにエスニックな手工芸品を制作するのみならず、婚姻儀礼や伝統的な商慣行、農耕儀礼、キリスト教儀礼、さらには農作業で使用する道具として、また単に「自己の楽しみのために」各種の手工芸品を制作し、ある文脈ではそれらを市場交換の場で商品として取り扱い、また別の文脈では儀礼のための贈与品や伝統衣装として使用するという、同一の製品を異なる社会的・文化的脈絡で使用する現状を明らかにした。 そしてそれらを、特にマレーシア、サラワク州の事例とマレーシア、ペナン州の事例を詳細に調査・分析する以外にも。タイやベトナムといった類似した現象が観察される地域の事例と比較する作業を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は夏季休業中と冬季休業中の二回に分けてフィールドワークを行い、上述の問題意識にい従った現地調査を計画し実行した。夏季休業中の調査は現地の調査協力者との連携が十分でなく、予定していただけのフィールドデータを収集することができなかったが、2018年から2019年にかけての年末年始の休業中に調査地を訪問し、キリスト教儀礼や婚姻儀礼、手工芸品制作者へのインタビューや参与観察、都市部での移民や先住民集住地域でのエスニック・ツーリズムやエスニックな手工芸品の販売状況を調査した。それにより、当該研究計画の目的の遂行に努めた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度もこれまでと同様、日本での関連する先行研究や理論的研究の収集と整理、分析活動を行う予定である。またこれまでの現地調査で得られたフィールドデータの整理を行い、さらなる現地調査の計画を立案する予定である。特に2018年度は、(1)エスニックな手工芸品制作者の手工芸品や労働、販売等に関する現地語表現に重点を置いた調査を行うことにより、「観光」「手工芸品」「労働」「ビジネス」といった観光人類学的な基本概念の再考を、民族誌的な研究成果から行うことを計画している。また(2)これらのエスニックな手工芸品の主要な顧客の中には、同じマレーシア国内や、タイ、ベトナムといった近隣諸国出身者、中国や台湾といった中国語文化圏の人々も存在するため、これら「多様な文化的背景・民族的背景」を持つ顧客によるエスニックな手工芸品の購入と使用目的に関する調査を行う計画を立てている。
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Causes of Carryover |
2018年度には夏季休業中に十分な現地調査の時間を取ることができなかったため、予定していた支出額を執行することができなかった。また2018年度は当初予定していた書籍や資料を購入せず、また機器類も購入しなかったため、次年度使用額が生じることとなった。
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Research Products
(3 results)