2018 Fiscal Year Research-status Report
戦争と観光――戦前期「満洲」における戦跡ツーリズムに関する歴史的研究
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17K02125
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
高 媛 駒澤大学, グローバル・メディア・スタディーズ学部, 准教授 (20453566)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 満洲 / 戦跡 / 観光 / 帝国 / 戦争 / ツーリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は前年度に引き続き、日本の国会図書館や中国の国家図書館などにおいて、満洲の戦跡ツーリズムに関する文献資料調査を行った。 上記の資料調査と並行して、平成30年7月に刊行された『日本植民地研究の視点』(岩波書店)に収録されたコラム「映画」を書き上げた。 12月に、「満鉄の観光映画――『内鮮満周遊の旅・満洲篇』(1937年)を中心に」と題する論文を『旅の文化研究所研究報告』第28号(旅の文化研究所)に掲載した。同論文は、平成29年7月の日本植民地研究会第25回全国研究大会での口頭発表を土台として書いたものである。 12月頃から、旅行雑誌『旅行満洲』の復刻版の解説論文の執筆を進め、「満洲国時代の旅行文化の一断面――『旅行満洲』を読む」と題する論文を完成した。同論文は平成31年4月に刊行された『「旅行満洲」解説・総目次・索引』(不二出版)に収録されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は主として観光映画や旅行雑誌といった観光メディアを題材に、戦跡を含む満洲観光の表象分析を中心に研究を進めた。 まず、『日本植民地研究の視点』に収録されたコラム「映画」では、2000年代以降における日本の植民地映画研究の動向を整理した。具体的には、帝国全体を見渡す巨視的視点、国境をまたがる映画人の生きざまといった歴史的細部に光をあてる微視的視点、映画受容の多義性や上映過程の政治性に注目する視点、植民地期とポスト植民地期を往還する視点という四つの視点が提示されたことをまとめた。 また、昭和12年(1937年)に公開された満鉄映画製作所製作の観光映画『内鮮満周遊の旅・満洲篇』に焦点を当て、その製作経緯をふまえながら、露骨なプロパガンダ映画とは一線を画す観光映画の独特な表現技法や、映像に隠された満洲表象の政治性を分析した。なかでも、戦跡を観光の目玉として誘致宣伝を行ってきた従来の満鉄の戦略と異なり、観光映画は日露戦争や満洲事変の戦跡のシーンを極くわずかしか取り入れていないことがわかった。「満洲=危険」のイメージを払拭するかの如く、観光映画は戦跡シーンを最小限に抑え、満洲事変後の不穏を想起させる場面を意図的に捨象することによって、戦争の影がすっかり遠のいた「明朗満洲」「平和満洲」の世界を演出したのである。 さらに、ジヤパン・ツーリスト・ビユーロー満洲支部が発行した旅行雑誌『旅行満洲』および後続誌を手がかりに、満洲国時代における戦跡の観光化過程と戦跡観光をめぐる在満日本人の言説について考察を深めた。
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Strategy for Future Research Activity |
まずこれまで蒐集した満洲戦跡の関連史料をもとに、満洲戦跡保存会などの主要団体の活動内容や、戦跡の観光化に関与した中心人物の経歴などを整理する。 次に、満洲における日本、中国、ロシアのそれぞれ代表的な戦跡に焦点を当て、各戦跡の観光化過程の歴史的経緯を明らかにする。 最終的に、戦跡観光をめぐる日本・中国・ロシア間の攻防の諸相を明らかにし、満洲の戦跡ツーリズムについて論考を仕上げる。 以上に加え、国際日本文化研究センター主催の共同研究「帝国のはざまを生きる――帝国日本と東アジアにおける移民・旅行と文化表象」に参加し、満洲史や朝鮮史など他分野の研究者と意見交換を行い、多様な視点を吸収しながら研究を深める予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、比較的高価な古い史料の購入を令和元年度に予定しており、その購入資金を確保するため、平成30年度の使用額を抑えたことによる。 今年度(令和元年度)は、古い史料の購入を積極的に行う予定である。
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