2020 Fiscal Year Annual Research Report
War and Tourism: A Historical Study on Battlefield Tourism in Manchuria during the Prewar Period
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17K02125
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
高 媛 駒澤大学, グローバル・メディア・スタディーズ学部, 教授 (20453566)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 満洲 / 戦跡 / 観光 / ツーリズム / 戦争 / 帝国 / 植民地 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、これまで日本国内や中国大陸、台湾などで調査・収集してきた満洲旅行の関連史料の分析を進めると同時に、国際日本文化研究センター主催の共同研究会での発表や、共著への論文執筆に取り組んだ。 まず、8月27日に、前年から参加していた国際日本文化研究センター主催の共同研究会「帝国のはざまを生きる――帝国日本と東アジアにおける移民・旅行と文化表象」において、「戦前における満洲ツーリズムと中国人社会」をテーマに発表した。発表では、中国語の公文書や新聞雑誌の記事および旅行記などを手がかりに、中国人旅行者の目に映った満洲イメージを観光場面ごとに提示した。加えて戦跡観光に対する中国人の反応や、戦跡用地の買収をめぐる日中間の交渉の様相などを考察した。 次に、11月に、「満洲の熊岳城温泉と軽便鉄道」と題する論文を書き上げ、共著『「小さな鉄道」の記憶――軽便鉄道・森林鉄道・ケーブルカーと人びと』(七月社)のなかの一篇として刊行した。同論文では、「南満洲三大温泉」の一つといわれた熊岳城温泉の歴史に焦点を当て、「温泉ホテル」という熊岳城唯一の温泉旅館の沿革や、南満洲鉄道株式会社(以下「満鉄」)の熊岳城駅と温泉間に敷設された軽便鉄道の変遷などを辿りながら、日露戦争時の傷病兵の転地療養所から満洲有数の行楽地を作り上げた、満鉄の熊岳城温泉の開発政策について解明した。 さらに、満洲現地における満鉄の観光事業だけでなく、旅順戦跡などの戦跡旅行を目玉として、満鉄が日本内地で行った観光宣伝にも目を向け、学校長会議の開催誘致などの事例を手がかりにしながら、満洲観光の牽引役としての満鉄の多彩な活動について考察を深めた。この研究は、「戦前日本における満鉄の観光誘致」と題する論文として執筆済みであり、令和3年度中に共著『帝国日本の観光――政策・鉄道・外地』(日本経済評論社)として刊行する予定である。
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